ご注意ください
桜田泰憲です。最初に言っておきますが、今回は完全に騙されました。いや、騙されたというか、勝手に勘違いしていたというか。
事の発端は2月の秋田出張です。あるレポート取材で湯沢市に行ったんですが、帰りに同僚のmikuが「道の駅に寄ろう」と。正直、道の駅なんてどこも同じだろうと思ってました。ところが。
稲庭うどんの正規品が並ぶ棚の横に、なんだかよくわからない袋詰めのうどんが山積み。値札を見て二度見しました。「稲庭うどん切れ端 1kg 980円」。
は?稲庭うどんって、北海道のデパートだと小さな箱で3000円くらいするあれでしょう?それが1キロで980円?しかも「切れ端」って何だよ。
疑心暗鬼で買って帰ったら
mikuは「絶対美味しい」と2袋買ってましたが、私は1袋だけもらいました。だって怪しすぎるでしょう。偽物じゃないかとすら思いました。
帰宅して家族に見せたら「えー、こんなバラバラの麺で大丈夫?」。従妹(介護士)は「なんか貧乏くさい」。母に至っては「またお前の変な土産か」。違うって💦
家族の視線が冷たい中、恐る恐る茹でてみました。茹で時間もバラバラの長さだからよくわからない。適当に4分くらいで上げて、普通のめんつゆで食べてみたんです。
これが、うまい。
いや、うまいなんてもんじゃない。完全に稲庭うどんです。あの独特のコシ、つるつる感、上品な味。むしろ短い麺は食べやすくて、長い麺はしっかり咀嚼できて、バラエティに富んでいるのが良い。
従妹も「これ本当に稲庭うどん?」、妹も「普通にうまいじゃん」、母は黙々と大盛りをおかわり。
調べてみたら、もっと驚いた
システム屋の性分で、帰宅後にネットで徹底的に調べました。
そもそも稲庭うどんの製造工程で、どうしても端の部分や不揃いな部分が出る。昔はこれを廃棄していたが、もったいないということで商品化したのが「切れ端」。原材料も製法も正規品と同じ。違うのは長さと太さが不揃いなだけ。
価格を調べると:
- 正規品(300g): 2500円前後 → 1kgあたり約8300円
- 切れ端(1kg): 1000円前後
つまり8分の1の値段。これ、おかしくないですか?
北海道の感覚で言うと
北海道にいると、稲庭うどんって「本州の高級品」なんですよ。お中元やお歳暮でもらう特別なもの。年に2〜3回食べられればいい方。
それが突然、普通のうどんより安い値段で食べられる。感覚的には、函館の高級海鮮丼が300円で食べられるようなもんです。
でも考えてみれば、北海道だって規格外の海産物を安く売ってるじゃないですか。形の悪いホタテ、小さなカニ、色の悪いイクラ。味は正規品と変わらないのに、見た目だけで値段が全然違う。
稲庭うどんの切れ端も同じ構造なんだなと。
家計への影響が予想以上
我が家、麺類の消費量がけっこう多いんです。従妹は食べ盛りだし、私も夜食によくうどん食べるし。
従来の買い物:
うどん代の内訳(目安)
- 冷凍うどん(5玉入り)×週2回 = 月8パック = 約2400円
- たまに生麺や乾麺 = 月1000円程度
- 合計:月3400円くらい
切れ端うどんに変後:
切れ端1kg = 1000円で約10食分
月3kg = 3000円で約30食分
単純計算で月400円の節約。たった400円?と思うかもしれませんが、年間4800円、10年で48000円。塵も積もればです。
しかも味は明らかに向上。家族の満足度も上がってる。これはコスパが良すぎる。
ただし、問題もある
良いことばかりじゃありません。実際に使ってみて気づいた問題点:
切れ端うどんの4つの問題点
家庭でよくある困りごと
長さが不揃いなうどんのイメージ
茹で時間がわからない
長さがバラバラだから、短いのは早く茹で上がるし、長いのは時間がかかる。適当にやるしかない。
見栄えが悪い
来客時には使いにくい。やっぱり見た目が統一されてないと、料理の写真も映えない。
保存が大変
1kgの袋が大きくて、キッチンの収納に困る。小分けパックの方が使いやすいんだけど、そうするとコスパが落ちる。
茹で加減の調整が難しい
家族それぞれ好みの硬さが違うんですが、長さがバラバラだと調整が困難。
で、結局どうなったか
3か月経った現在、我が家では切れ端うどんが完全に定着しました。
週2〜3回は夕食に登場。私の夜食もこれ。休日の昼食も基本これ。もう普通のうどんに戻る気がしません。
従妹も最初は「貧乏くさい」と言ってましたが、今では「これでいいじゃない、味は変わらないんだから」。妹は友達に話して、その友達の家でも買うようになったとか。母は相変わらず何も言いませんが、おかわりの頻度が明らかに増えました。

騙されて良かった、の意味
最初「騙された」と思ったのは、勝手な先入観からでした。
よくある思い込み
- 「安いものは質が悪い」
- 「見た目が悪いものは味も悪い」
という思い込み。
でも実際は、製造業の構造的な問題で生まれた「もったいない商品」だった。味も品質も正規品と同じなのに、見た目だけで価格が8分の1。
これって、日本全体で考えると巨大な無駄ですよね。形が不揃いというだけで廃棄される食品がどれだけあるか。それを商品化すれば、消費者は安く良いものが買えて、生産者は廃棄コストが削減できて、環境にも優しい。
稲庭うどんの切れ端は、その象徴的な成功例なんじゃないかと思います。
騙されて良かった。いや、騙されたんじゃなくて、勝手に思い込んでただけ。60歳にもなって、まだまだ知らないことだらけです。
今回、mikuからもらった稲庭うどん。他にも「切れ端」みたいな商品がないか、探してみるつもりです。きっと全国にはまだまだ隠れた逸品があるはず。先入観を捨てて、本当の価値を見極める目を養いたいと思います。
筆者:桜田 泰憲