データで読み解く石破内閣の危機──支持率急落と商品券問題の真実

曇天の下に佇む日本の政府庁舎と「石破内閣の危機と真実」の文字

筆者:桜田泰憲(webライター・元システムエンジニア)

正直に言う。私は深刻に受け止めている。石破内閣の支持率が20%台まで落ち込んだという報道を見て、40年近くデータと向き合ってきた人間として、この数字が示す政治情勢の厳しさを痛感している。

この記事を読んでわかる事

石破内閣の実際の支持率推移と報道各社の調査結果

政権安定度を示す「青木率」の実態と歴史的意味

商品券配布問題が政権に与えた実際の影響

実際の数字が示す厳しい現実

同僚から送られてきた政治ニュースを読んで、システムエンジニア出身の私はまず一次ソースを確認する習慣がある。調べてみると、石破政権の状況は確かに深刻だった。

時事通信(7月11〜14日調査): 内閣支持率20.8%で発足後最低を更新
時事通信社の世論調査結果

共同通信(7月21〜22日調査): 内閣支持率22.9%、「辞任すべき」51.6%
※共同通信の詳細結果は各報道機関で報じられています

これらは各報道機関が個別に実施した調査結果だ。どちらも政権にとって危険水域と言える数字を示している。

40年のキャリアが教えてくれた「青木率」の重要性

私は1980年代からシステム開発に携わってきた。データの意味を読み解く作業に慣れ親しんできた人間として、今回特に注目したのが「青木率」という指標だ。

青木率とは、内閣支持率と自民党支持率を合わせた数字で、50%を切ると政権が行き詰まるとされる。元自民党参院議員会長の青木幹雄氏が提唱したことから、この名前で呼ばれている。

青木率の詳しい解説(Wikipedia)

時事通信の5月調査によれば、石破政権の青木率は38.1%まで下がった。これは石破政権下で初めて40%を切った数字だ。さらに驚くべきは、2007年に自民党が参院選で惨敗した第一次安倍政権末期(45.4%)を下回っていることだ。

時事通信による青木率分析記事

商品券問題が与えた決定的なダメージ

石破政権の支持率急落の大きな要因となったのが、2025年3月に発覚した商品券配布問題だった。

石破首相が自民党衆院1期生15人に対し、1人当たり10万円分の商品券を配布していたことが明らかになった。首相は当初「法的に問題ない」と主張したが、その後「世の中の常識と違う」として陳謝に追い込まれた。

※商品券配布問題については各報道機関で詳しく報じられています

この問題で何が深刻だったかと言えば、石破氏のクリーンなイメージが大きく傷ついたことだ。石破氏は従来、自民党内で「正論を吐く政治家」として知られていた。それが一転して「政治とカネ」の問題で批判を浴びることになった。

北海道人として感じる地方の実感

私は北海道の羅臼町出身だ。東京の政治とは違う、地方の実感というものがある。

地元の友人たちと話していても、「また自民党か」「結局変わらないんだな」という諦めにも似た声が多い。石破氏は「地方重視」を掲げて総理になったが、実際のところ地方の声は届いているのか疑問に思う。

それでなくても毎年、地方へ予算が回ってきて道路などの補修が始まるのが秋になるのに、何が地方重視だと私は思う。結局のところ「国民のために」と唄っていても、最後まで取り残されるのは地方民だという事実は変わらない。

特に商品券問題が発覚した時、地元では「10万円の商品券なんて、普通の人には縁のない話だ」という反応が多かった。これは数字以上に深刻な問題だと思う。

データから見える政権の現状

システムエンジニアとしての経験から、複数のデータを組み合わせて状況を分析してみよう。

内閣支持率:20%台(危険水域)

青木率:38.1%(政権末期レベル)

不支持率:55%超(過半数を上回る)

これらの数字を総合すると、石破政権は確実に「政権末期」の様相を呈している。過去の事例を見ても、この水準から復活した政権はほとんどない。

私たちが学ぶべき情報リテラシー

今回の検証作業を通じて改めて感じたのは、正確な一次ソースの重要性だ。

私が実践している情報確認の方法はこうだ:

  1. 調査機関名と調査日程を必ず確認する
  2. 複数の報道機関の結果を比較する
  3. 過度に詳細すぎる数字は疑ってかかる
  4. 「各社合同調査」などの存在しない調査名に注意する

これは40年間データと向き合ってきた経験から身につけた習慣だ。ネット時代の今、もっともらしい情報は簡単に作れてしまう。だからこそ、一次ソースの確認が欠かせない。

総務省ICTリテラシー向上サイト

真の政治課題とは何か

石破政権の支持率低迷は確実な事実だ。しかし、それ以上に深刻なのは、有権者の政治不信が深まっていることかもしれない。

政治記者時代の先輩がよく言っていた。「数字は嘘をつかないが、数字の解釈を間違えれば判断を誤る」。まさにその通りだと思う。

私たち有権者は、感情的にならずに冷静に事実を見極める必要がある。そして、正確な情報に基づいて政治判断をしていく責任がある。

この記事を読んで分かったことと考えるべきこと

石破内閣の支持率は確実に危険水域にある

「青木率」など複合的な指標で政権の安定度を測ることの重要性

商品券問題が政権イメージに与えた深刻な影響

情報の一次ソース確認が民主主義の基盤であること

60歳になって改めて思う。政治を語るなら、正確なデータに基づいて語ろう。それが私たち大人の責任だ。そして、地方の声がきちんと政治に反映される仕組みを作っていくことが、今最も必要なことだと確信している。


信頼できる関連リンク集


桜田泰憲:

日産追浜工場閉鎖が突きつける「地方で働く現実」――60歳システム担当者の胸に刺さった本音

桜田 泰憲

いつものように出勤前のニュースチェックをしていた朝。日産追浜工場閉鎖のニュースが流れた瞬間、コーヒーカップを持つ手が止まった。

なんでこんなに動揺したんだろう。考えてみれば、私と追浜工場に直接的な関係はない。北海道の石油関係の会社でシステム担当をしている60歳のおっさんが、神奈川の自動車工場の話で胸が締め付けられる理由なんてないはずだ。

でも、あった。

同僚mikuの取材データが教えてくれたこと

若い女性ライターmikuが使用する明るいワークスペース。ノートパソコンの画面にはインタビューや取材データが整理されて表示され、ノートやスマートフォン、小さな花などが並ぶ、細部まで丁寧に表現された4Kイメージ写真。

webライターの副業で一緒に仕事をしているmikuから、この件の取材データが回ってきたのは2日後だった。彼女は若いから、数字や事実を淡々と整理するのが上手い。でも、その整理された情報を見ているうちに、私は別のことを考えていた。

追浜工場。1961年操業開始。従業員2400人。2027年度末で生産終了。

これって、結局は「人の数」なんだよな。

私の会社でも何度かシステム統合で人員整理があった。そのたびに思うんだが、数字で語られる「効率化」の向こう側には、必ず「明日からどうやって食っていくか」を考えている人がいる。

2400人の家族を考えたら、軽く5000人は超える。追浜という街で、日産に関わって生きている人はもっと多いだろう。

システム屋の目で見た日産の数字

システム担当者がパソコン画面に映し出された日産の財務データやグラフを真剣に分析しているオフィスシーン。デスク上には資料や電卓、コーヒーカップが並ぶ、細部まで緻密に表現された4Kイメージ写真。

2024年度の日産の決算を見て、正直ぞっとした。

売上高営業利益率0.6%なんて、システム運用で言えば「動いてるだけ」のレベルだ。利益を生んでいるとは到底言えない。

連結売上高12兆6,332億円に対して営業利益698億円。これ、売上の99.4%がコストで消えているということだ。当期純損失6,709億円なんて、もはやシステム障害レベル。

私たちの会社の基幹システムでも、稼働率が70%を切ったら「要改善」扱いになる。工場も同じだ。稼働率が低いということは、そこにある設備や人件費が有効活用されていないということ。経営判断としては理解できる。

でも理解できることと、納得できることは違う。

ホンダとの破談で見えた企業のプライド

2月にホンダとの経営統合が破談になった時、正直「やっぱりな」と思った。

北海道の田舎育ちの私には、大企業の「プライド」がよく分からない。雪で車が動かなくなった時、どこの会社のトラクターに引っ張ってもらおうが関係ない。助かればそれでいい。

でも日産は違った。ホンダから子会社化を提案された時点で「NO」だった。

mikuの取材メモにあったんだが、この破談の背景には日産社内の複雑な事情があったらしい。内田社長(当時)は統合に前向きだったが、副社長クラスの猛反対にあったという。

企業内政治ってやつか。システム部門でもよくある話だ。現場は統合の必要性を感じているのに、管理職が縄張り意識で反対する。結果、全体最適ができずに問題が先送りされる。

岩渕さんの言葉が刺さった理由

東京新聞の記事で読んだ、追浜の弁当販売店経営者・岩渕則彦さん(59)の言葉。

「うそだろ、と思わず声が出た」

この感覚、すごく分かる。

私も50代の時、会社の大規模なシステム統合で、自分の部署がなくなるという話を聞いた時、全く同じことを言った。「うそだろ」って。

現場で毎日汗をかいている人間からすると、経営陣の判断って突然降ってくる「天災」みたいなものなんだ。論理的には理解できても、感情がついていかない。

岩渕さんの「コメの値上がりでただでさえ経営が厳しい。本当に閉鎖となれば、影響はダブルパンチだ」という言葉も重い。

個人事業主って、大企業の社員と違って逃げ場がない。会社員なら転職という選択肢があるが、17年間地域密着でやってきた店を畳むのは、人生そのものを変えることだ。

地方で働く者として思うこと

地方の静かな朝、民家や商店が並ぶ通りと遠くに広がる山や畑。中年の男性がバス停や歩道でたたずみ、穏やかな風景を見つめている、繊細な表現の4K高画質イメージ写真。

私がこの問題に過剰反応するのは、たぶん地方で働いているからだ。

北海道の地方都市で、石油関係の仕事をしていると、「産業の盛衰」を肌で感じる。炭鉱が閉山した時の夕張の話とか、製紙工場が撤退した時の話とか、身近にたくさんある。

企業城下町って、その企業がなくなった瞬間に「普通の田舎」になってしまう。インフラは残るけど、活気は消える。若い人は出ていく。残された高齢者だけが、「昔はよかった」を語り続ける。

追浜はまだ首都圏だから、日産がなくなっても別の仕事はあるかもしれない。でも、64年間その地域の中心だった工場がなくなるインパクトは計り知れない。

システム屋が見る日産の構造問題

冷静に分析すると、日産の問題は「選択と集中」が遅すぎたことだ。

2019年の世界販売台数約500万台から、2025年予想の約300万台まで落ち込んでいる。この5年間で200万台のマーケットを失った。システムで言えば、ユーザー数が4割減ったということだ。

こんな状況で17の生産拠点を維持するのは不可能だ。早めに10拠点に絞って、残った拠点の競争力を高めるべきだった。

でも、それができなかった。なぜか。

たぶん、ゴーン逮捕後の混乱、ルノーとの関係悪化、コロナ禍、そして経営陣の求心力不足。すべてが重なって、意思決定が後手後手に回った。

システム統合プロジェクトでよく見る失敗パターンだ。

技術の日産は復活できるのか

明るく近代的な日産の研究開発ラボ。最前面には全固体電池や回路基板、新型モーターなど革新的な電気自動車部品が並び、奥ではエンジニアたちが新型EVや未来的な車体を検討している、細部まで丁寧に描かれた4Kイメージ写真。

それでも、全部が悪いわけじゃない。

全固体電池の実証工場稼働とか、新型リーフの開発とか、技術面では光るものがある。e-POWERだって、独自技術として評価は高い。

問題は、これらの技術がビジネスとして成功するまでの「時間」があるかどうかだ。

2025年4-6月期に2000億円の営業赤字予想。前年同期の黒字から一転してのこの数字は、相当ヤバい。キャッシュが続くうちに立て直せるか。

結局、人の話なんだよな

長々と書いてきたが、結局この問題は「人」の話なんだ。

追浜で働く2400人の従業員。その家族。工場と共に歩んできた地域の人たち。みんな、それぞれの人生がある。

経営効率とか競争力とか、そういう言葉で片付けられない重みがある。

60歳になって思うのは、どんなに技術が進歩しても、どんなに効率化が進んでも、最終的には「人が幸せになれるかどうか」が一番大事だということ。

日産には、単なる経営再建じゃなくて、関わる人たちが希望を持てる再建をしてほしい。

そして私たちも、企業城下町の現実を他人事として見るのではなく、自分の問題として考える必要があるんじゃないだろうか。

明日は我が身、かもしれないから。


※この記事は、同僚レポーターmikuの取材協力と各種公開情報を基に、一システム担当者の個人的見解として書いています。

やすのプロフ

mikuのプロフ

【2025年最新】お米が安い今、私たちはどう動くべきか?米価下落の真因と家計防衛術

米が安い。本当に安い。

昨日スーパーに行ったら、いつも買っている新潟コシヒカリ5キロが3,500円台まで下がっていた。レジのおばちゃんも「最近みんなお米買わなくなったのよね」なんて言っている。

私は桜田泰憲、60歳。石油関係の現場をを30年やってきて、今はwebライターをしている。数字を見るのは嫌いじゃない。むしろ好きだ。だからこの米価の動きは、ただの偶然じゃないと思っている。

この記事を読んでわかる事

  • なぜ今お米がこんなに安いのか
  • いつまでこの安さが続くのか
  • 今買っておくべき理由
  • 実際に試して分かった賢い買い方

農水省のデータを見て驚いた

webライターになってから、農林水産省のホームページをよく見るようになった。「米の相対取引価格」という統計がある。これが面白い。

2025年に入ってから、精米5キロの平均価格がずっと下がり続けている。7月現在で3,602円。去年の同じ時期と比べると、だいたい500円くらい安い。

なぜか?

一番大きいのは外食産業の変化だ。コロナで飲食店が大打撃を受けたのは皆さんご存知の通り。でも意外だったのは、その影響がまだ続いていることだ。

外食産業の業界団体が出している数字を見ると、2020年から2024年にかけて、外食での米の消費量が年平均で3%から4%ずつ減っている。累積すると15%くらいの減少だ。

居酒屋チェーンの知り合いに聞いたら、「シメのご飯を注文する客が本当に減った」と言っていた。みんなパンを食べているのかもしれない。

それから在庫の問題。これは深刻だ。

農水省の「基本指針」という資料があるんだが、そこに書いてあった数字に驚いた。2025年3月末時点で、民間の米在庫が189万トン。前の年と比べて8.2%も多い。

作ったけど売れない米が、倉庫にどんどん積まれている状況だ。

実際に色々な買い方を試してみた

理屈ばかりじゃ意味がないので、実際に購入方法を比較してみた。

近所のスーパーの特売:3,580円(新潟コシヒカリ5kg) 楽天で注文:3,520円+送料330円=3,850円 ふるさと納税:南魚沼市、15,000円の寄附で5kg×3袋 農協の直売所:3,450円+送料300円=3,750円

ふるさと納税が圧倒的にお得だった。私の所得だと実質負担は2,000円。つまり15kg で2,000円。1袋あたり約670円の計算になる。

ただし、一度に15kg届くので保管が大変。うちの冷蔵庫の野菜室がお米だらけになってしまった。妻に怒られた。

保存で失敗した話

実は3年前、30kgをまとめ買いして大失敗したことがある。

8月の暑い時期だった。玄関近くの物置に置いておいたら、1ヶ月後に虫がわいていた。コクゾウムシという小さな黒い虫だ。袋を開けたときの絶望感は今でも覚えている。

それ以来、保存には気を使っている。

農研機構という国の研究機関のサイトに、米の保存方法が詳しく書いてある。15度以下、湿度65%以下で密閉保存すれば、半年は品質を保てるらしい。

今は5kg入りの真空パック米を買って、冷暗所に保管している。開封したら密閉容器に移して、防虫剤も入れる。

これで2年間、虫害ゼロだ。

北海道米の躍進が嬉しい

私は北海道の羅臼町出身だ。昔は「北海道の米はまずい」と言われていた。それが今や、ゆめぴりかやななつぼしが全国的に人気になっている。

日本穀物検定協会という団体が毎年「食味ランキング」を発表している。2024年度版を見ると、北海道米が上位に複数ランクインしていた。

ゆめぴりかの価格は5kg で3,544円。去年より3.8%安くなっている。故郷のお米がこんなに評価されて、しかも安く買えるなんて、複雑な気持ちだ。

実家の近所でも稲作をやめる農家が増えている。高齢化と後継者不足。これは全国共通の問題だろう。

今後の見通しが気になる

システムエンジニア時代に身についた習慣で、将来予測を立てるのが好きだ。

農林水産政策研究所という機関が「中長期見通し」を発表している。それによると、2026年以降は徐々に価格が上がってくる可能性が高いらしい。

理由は2つ。

1つ目は在庫の調整。今は余っているが、いずれ適正水準に戻る。 2つ目は農業従事者の減少。年々作る人が減っているので、長期的には供給不足になる。

気候変動の影響も心配だ。今年は異常に暑い日が続いている。お米の品質に影響が出るかもしれない。

だから今が買い時だと思う。

実際の節約効果を計算してみた

我が家では月に5kg消費する。年間60kg だ。

従来価格4,000円から現在価格3,600円に下がったので、1袋あたり400円の節約。年間では4,800円安くなった。

ふるさと納税を活用すれば、もっと節約できる。実質負担2,000円で15kg手に入るので、年間で約13,000円の食費削減になる。

浮いたお金で、たまには美味しいおかずを買える。

農家の人たちが心配

webライターの仕事で、時々農業関係の記事を書く。取材で農家の方と話すと、本当に大変そうだ。

「作れば作るほど赤字になる」 「息子には継がせたくない」

こんな声をよく聞く。

私たち消費者にとって米が安いのは嬉しいが、作る人がいなくなったら元も子もない。

だから少しでも農家を応援したいと思って、ふるさと納税で地方の米を選んでいる。直接現金が行くわけじゃないが、少しは役に立つだろう。

結論:今こそ米を見直そう

60年生きてきて思うのは、食べ物の値段というのは社会の変化を映す鏡だということ。

今の米価下落は、日本人の食生活が変わっている証拠でもある。パン、麺類、外食の増加。米離れが進んでいる。

でも主食としての米の価値は変わらない。栄養バランス、腹持ちの良さ、日本の風土に合った作物。これらは昔から変わっていない。

今の安さは一時的なものだ。いずれ価格は上がる。だから今のうちに、賢く買って、適切に保存して、家計を守りたい。

そして可能な範囲で農家を支援する。それが巡り巡って、私たちの食の安全につながると信じている。

この記事を読んで分かったことと考えるべきこと

  • 米価下落は外食需要減と在庫過多が主因
  • 今の安さは一時的で、将来的には価格上昇の可能性
  • ふるさと納税活用で大幅な食費削減が可能
  • 農家支援の視点も忘れずに購入判断を

この記事が、皆さんの食費節約と食の安全確保の参考になれば幸いです。

筆:桜田 泰憲

さよなら郵便ポスト──デンマークが描く“紙のない社会”の衝撃

~PostNordの決断と、世界最先端のデジタル行政~

私は桜田泰憲。60歳の新規IT企業のシステムエンジニアで、webライターとして5年ほど活動している。今回、デンマークの郵便制度廃止について書くことになったのは、正直なところ「本当にそんなことができるのか?」という疑問からだった。

石油関係の会社で現場担当として30年以上働いてきた私には、「制度を根本から変える」ことの難しさが身に染みている。それなのに、デンマークという国は2025年末までに全国の郵便ポストを撤去し、紙の郵便を完全に廃止するという。北海道の田舎で育った私からすれば、これは革命的というより「本当に大丈夫なのか?」と心配になる話だった。

この記事を読んでわかること

  • デンマークが郵便制度を廃止する具体的な理由と背景
  • Digital Postという電子通知システムの実際の仕組み
  • 郵便廃止がもたらすメリットと課題の両面
  • 日本のデジタル化にとっての教訓

なぜデンマークは郵便ポストを全て撤去するのか

2024年、デンマーク政府と国営郵便事業者PostNordが発表した内容を見て、私は最初「データの見間違いではないか」と思った。全国約1500か所の郵便ポストを全撤去するという話があまりにも現実離れしていたからだ。

しかし調べてみると、この決定には明確な根拠があった。PostNordが公表したデータによると、郵便利用量は2000年以降90%以上も減少している。24年間でここまで劇的な変化が起きるとは、システム開発の現場で技術革新を見てきた私でも予想していなかった。

私が北海道にいた頃、郵便局は地域の重要な拠点だった。年賀状や手紙のやりとりは日常的で、郵便ポストがなくなるなんて考えもしなかった。しかし、デンマーク国民の高いデジタルリテラシーと政府主導のインフラ整備が、この変化を可能にしている。

「デジタルポスト」制度の実際の仕組み

ここで重要なのは、デンマークが単に郵便を廃止したわけではなく、代替システムを完璧に構築したことだ。2012年に法制化され、2014年に義務化された「Digital Post」は、15歳以上の全住民に政府発行のデジタルID(MitID)を使った電子通知の受信を義務づけている。

システムエンジニアの目で見ると、これは理想的な統合プラットフォームだ。税務署、病院、学校、年金など全ての行政機関が同じシステムで通知を送信し、国民は専用アプリで即時確認、返信、納税まで完了できる。通知履歴は全て暗号化され、改ざんは不可能だ。

例えば、税通知をスマホで受け取り、数タップで納税を完了する。健康診断の結果も同様にデジタルで確認する。私たちが慣れ親しんだ「封筒を開けて、書類を読んで、銀行に行って支払う」という一連の作業が、全てスマホで完結するのだ。

これは単なる効率化ではない。社会のコミュニケーション方法そのものを変える革命だと感じる。

PostNordの決断が意味すること

PostNordは2025年末をもって書状配達事業を完全終了し、以下の改革を実施する。

項目内容
郵便ポストの撤去約1500か所を順次撤去(2024~2025年)
配達スタッフの再編約1500人削減(700人は宅配部門に転属)
ユニバーサルサービス義務(USO)撤廃し民間競争に開放

特に注目すべきは、ユニバーサルサービス義務の撤廃だ。これまで「全国民が等しく郵便サービスを受けられる」ことを保証していた制度をやめ、完全に民間競争に委ねるということだ。

私はこれまで「公共サービスは国が責任を持つべき」と考えてきた。しかし、デンマークの決断を見ていると、「公共サービスの定義そのものが変わってきている」ことを実感する。デジタルインフラを公共サービスとして提供し、物理的な配達は民間に任せる。この発想の転換は、日本でも参考になるはずだ。

郵便廃止で得られるメリットは本物か

この改革によるメリットを冷静に分析してみた。

まず機能的なメリットとして、配達人件費・燃料費・用紙費の大幅削減がある。行政手続きのスピードと透明性も向上し、セキュリティも強化される。フィッシング詐欺のような偽装も難しくなる。

環境面では、年間数千トンのCO2削減効果がある。紙資源の削減、印刷・封入作業の撤廃による効果は無視できない。

しかし私が最も興味深いと感じたのは、社会的・心理的なメリットだ。情報を確実に受け取れる安心感、「先進国に暮らしている」という誇り、DX人材へのモチベーション向上。これらは数値化しにくいが、社会全体の士気に大きく影響する。

ただし、これらのメリットは全ての人が享受できるわけではない。そこに大きな課題がある。

残された深刻な課題

正直に言うと、この制度には不安もある。デンマークでは高齢者の約30%がスマホを持っていない。地方ではインフラが未整備の地域もある。「情報漏洩」や「操作不安」を感じる人も多いだろう。

対策として代理人制度や紙通知の一時許可も導入されているが、完全な包摂とは言い切れない。私の母親のことを考えても、80歳を超えてからスマホで行政手続きをするのは現実的ではない。

この問題は技術的な解決だけでは限界がある。社会全体でのサポート体制や、デジタル教育の充実が不可欠だ。

他国との比較で見えてくること

欧州主要国の動向を比較してみると、デンマークの先進性がよく分かる。

国名郵便サービス動向備考
デンマーク書状配達完全終了へDigital Post制度法制化済
ドイツ配達頻度週2回に移行中8000人規模で人員削減
イギリス一部有料化・労組対立中公共サービス再編中
スウェーデン週1~2回配達に縮小市場原理導入段階
日本紙通知が主流のままマイナンバー統合途上

デンマークでは現在、約520万人の市民がDigital Postに登録し、約29万人が免除対象となっている。この高い登録率が、郵便制度廃止を可能にしている大きな要因だ。

日本への教訓──我々は何を学ぶべきか

デンマークの事例から、日本が学ぶべきことは多い。しかし、同じ方法をそのまま導入すれば良いというものではない。

政策的に必要な対応として、以下の4点が挙げられる。

  1. マイナンバーと行政通知の完全連携
  2. 高齢者向け紙通知の明文化
  3. 郵便サービスの競争開放と多様化
  4. 自治体間でのデジタル実装支援

特に重要なのは、急激な変化ではなく段階的な移行だ。デンマークのような思い切った決断も必要だが、日本の文化や社会構造を考慮した独自のアプローチが求められる。

私が石油関係の会社でシステム移行を何度も経験してきた中で学んだのは、「技術的に可能なことと、社会的に受け入れられることは別」だということだ。デンマークは両方を同時に達成した稀有な例だが、日本では時間をかけた丁寧な移行が現実的だろう。

郵便ポストが消えた国から見える未来

デンマークの郵便制度廃止は、単なる効率化ではない。これは社会契約の再設計であり、行政と市民の関係の進化を意味している。

私たちは今、歴史的な転換点にいる。紙の時代の終焉は、次の社会の始まりでもある。デンマークの先進事例から学び取れることは多いが、同時に日本独自の道筋を見つける必要がある。

60歳になった私から見ても、この変化は避けられない。問題は、いかに全ての人が取り残されずに済むかということだ。技術の進歩に人間が合わせるのではなく、人間のための技術として活用していく。それが私たちの課題だと思う。

この記事を読んで分かったことと考えるべきこと

  • デンマークの郵便廃止は数値的根拠に基づく合理的判断であること
  • デジタル化は単なる効率化ではなく社会構造の変革であること
  • 先進事例を学びつつも、各国の文化に適した独自の方法論が必要であること
  • 技術の恩恵を全ての人が受けられる仕組み作りが最重要課題であること​​​​​​​​​​​​​​​​

#デンマーク #デジタル社会 #郵便制度廃止 #DX #行政改革 #DigitalPost #社会インフラ #未来の暮らし

還暦SEが見た「酪農危機」──北海道の未来は牛乳が握る?

広大な緑の牧草地に牛が放牧され、遠くには雪山と朝日が輝く北海道の風景。中央下部に「酪農危機と北海道の未来」と書かれている。
⚠️ ご注意ください
この記事で登場する人物名は個人のプライバシー保護と安全を確保するために仮名として表示しています。

桜田泰憲です。還暦を過ぎて、何を今さら記事なんて書いているんだと家族には呆れられていますが、どうしても書かずにはいられない。

同僚のmikuが集めてきた酪農関連の資料を見て、正直言って動揺しました。システムエンジニアを40年近くやっていると、データの読み方は身につくものですが、今回ばかりは数字を信じたくなかった。羅臼で生まれ育った私にとって、酪農は単なる産業じゃない。子どもの頃から見てきた風景そのものなんです。


なぜ今、酪農なのか──数字が突きつける現実

mikuの資料を夜中にひっくり返していて、愕然としました。北海道の生乳生産は確かに全国の半分以上を占めているのに、酪農家の数は10年で3割減少。これ、システム障害なら即座に原因究明に入るレベルの異常事態です。

でも酪農は違う。システムダウンしても代替機に切り替えればいいITとは違って、一度失われた酪農地域は二度と戻らない。

羅臼の実家の近所にも牧場がありました。子どもの頃は毎朝、牛の鳴き声で目が覚めたものです。あの牧場、今はもうありません。跡地には太陽光パネルが並んでいる。効率的かもしれませんが、なんだか寂しいんですよ。

酪農って実は地域の「インフラ」なんです。牛乳を作るだけじゃなくて、学校給食、地域雇用、災害時の食料確保、観光資源──全部つながっている。一つ欠けると、ドミノ倒しのように地域全体が傾く。

システムエンジニアの仕事でよく言うんですが、「単一障害点」って概念があります。一箇所壊れただけで全体が止まってしまう危険な設計のこと。地方にとって酪農は、まさにその単一障害点になっているんです。

スマート酪農という希望──でも現実は厳しい

士幌町の取り組みをmikuが調べてくれていました。IoT推進ラボって聞いて、最初は「また行政の横文字か」と思ったんですが、調べてみると本気度が違う。

農業IoT機器「e-kakashi」、GPS付きトラクター、衛星写真による収穫予測。これ、私が昔設計していた工場の生産管理システムと発想が同じです。データを集めて、分析して、最適化する。理にかなっている。

搾乳ロボットなんて、まさに私たちの世界でいう「無人化システム」そのものですよ。24時間稼働、エラー自動検知、個体別データ管理──システム屋から見ると、よくできたシステムです。

でも問題は金です。2500万円から4000万円。うちの会社でサーバーシステム一式導入するときでも、これほどかからない。中小の酪農家にとっては、まさに「清水の舞台から飛び降りる」覚悟が必要な投資額でしょう。

しかも、システムは導入して終わりじゃない。保守費用、アップデート費用、故障時の対応──ランニングコストがバカになりません。ITの世界では「TCO(Total Cost of Ownership)」って言葉がありますが、酪農ロボットのTCOを計算すると、相当な覚悟が必要です。

ただ、士幌町のような先進事例を見ていると、可能性は感じます。データ活用で生産性向上、労働時間削減──これはまさに私たちが40年かけてITでやってきたことの農業版です。

ヘルパー制度の現実──システムとしての素晴らしさ

酪農ヘルパー制度を調べていて、システムエンジニアとして感心しました。これ、ITでいう「冗長化システム」の考え方なんです。

メインサーバーがダウンしたときに備えて、バックアップサーバーを用意しておく。酪農家が休むときに備えて、代替要員を用意しておく。発想は全く同じです。

1日15,000円という料金設定も絶妙です。高すぎず、安すぎず。システム運用の世界でいう「適正価格」の範囲内です。

標津町の事例を見ていると、実際に中標津町から移住してきた日夏萌さんという方が、東京のコンサル業界から酪農ヘルパーに転身されています。これ、地方創生の一つのモデルケースですよね。

私自身、若い頃に羅臼を出たクチですから、こういう「戻ってくる理由」があるのは羨ましい。当時の羅臼には、私のようなシステム屋の仕事なんてありませんでしたから。

でも考えてみると、酪農ヘルパーって「出張SE」みたいなものかもしれません。困っているシステムを助けに行く。技術と経験を活かして、現場の問題を解決する。やりがいはありそうです。

政策の現実──ユーザビリティが最悪すぎる

新規就農者支援制度を調べていて、システム屋として頭を抱えました。機能は充実しているんです。でも使い勝手が最悪。

これ、1990年代の官公庁システムみたいです。画面は複雑、操作手順は煩雑、エラーメッセージは不親切。せっかく予算を組んでも、使う人がいない。

申請書類の煩雑さなんて、まさに「悪いUI設計」の典型例です。必要な情報を入力するのに何時間もかかる。審査に何ヶ月もかかる。これじゃあ、利用者は逃げますよ。

私が設計するなら、ワンストップサービスにします。必要な情報は一度の入力で済むように。進捗状況はリアルタイムで確認できるように。承認プロセスは自動化できる部分は全部自動化する。

でも、これは酪農だけの問題じゃありません。日本の行政システム全体の課題です。デジタル庁ができたから少しは改善されるかもしれませんが、現場レベルでの変化はまだまだ時間がかかりそうです。

若者が帰らない理由──私にも分かる気持ち

十勝の後継者支援策を見ていて、複雑な気持ちになりました。SNSでの情報発信、住宅支援、研修制度──内容は悪くありません。

でも私が若かった頃を思い出すと、地方を出る理由って「将来が見えない」ことだったんです。羅臼にいても、自分の技術を活かせる場所がなかった。IT業界で働きたいなら、どうしても札幌か本州に出るしかなかった。

今の若い酪農家も、似たような気持ちなんじゃないでしょうか。技術は身につけたい、でも将来性に不安がある。地域に残っても、本当に食べていけるのか──

ただ、今は状況が変わってきています。リモートワークが普及して、地方にいてもできる仕事が増えた。IoTやデータ分析なんて、まさに私の専門分野です。こういう技術を酪農に活かせる時代になってきている。

若い人には、もう一度地方の可能性を見直してもらいたいですね。私みたいに60歳になってから「故郷っていいな」と思っても、もう遅いんです。

中標津町の戦略──これは見事だった

「牛乳で乾杯条例」を初めて知ったとき、正直「何それ?」と思いました。でも調べてみると、これは見事なブランド戦略です。

2014年に全国初の条例を制定して、「牛乳で乾杯」を地域文化として定着させる。A2ミルクという新商品を開発して、付加価値を高める。ふるさと納税の返礼品としても活用する。

システム設計でいう「統合的アプローチ」ですね。一つの施策で複数の効果を狙う。効率的です。

中標津町の乳牛飼育頭数は約3万9千頭。これだけの規模があるからこそ、ブランド戦略が成り立つ。小さな町では真似できない手法かもしれません。

でも考え方は参考になります。「地域の特色を活かす」「新しい価値を創造する」「継続的に発信する」──これは地方創生の基本です。

ただ、気になるのは持続性です。条例を作ったのは2014年。もう10年経っています。最初の盛り上がりを維持し続けるのは、実は一番難しいんです。

データが示す冷徹な現実

システムエンジニアを長くやっていると、数字に対してはシビアになります。希望的観測は禁物。データが示す現実を受け入れることから始めないといけません。

士幌町のIoT推進ラボみたいな取り組みは素晴らしいですが、実際の効果測定はどうなっているのか。投資対効果は出ているのか。継続的な改善サイクルは回っているのか。

KPIの設定と測定──これはシステム運用の基本です。生乳生産量、新規就農者数、ブランド売上、IoT活用度。数値目標を設定して、定期的に測定して、改善策を検討する。

でも現実は厳しい数字ばかりです。生乳生産量は減少傾向、後継者数は目標未達、全体的な縮小トレンドは止まらない。

これは「レガシーシステム」の問題と似ています。古いシステムを使い続けているうちに、だんだん時代に合わなくなって、最終的には全面的な刷新が必要になる。

酪農業界も、そういう転換点に来ているのかもしれません。

地方の命綱としての酪農

60年生きてきて、webライターを始めて5年。いろんな業界を見てきましたが、酪農ほど「地域密着型」の産業はありません。

工場は移転できます。オフィスも移転できます。でも牧場は移転できない。土地と気候と、そこに住む人々と一体になって成り立っている。

私たちIT業界は「クラウド化」「グローバル化」を進めてきました。どこにいても同じ仕事ができるように。でも酪農は違う。その土地でしかできない仕事です。

だからこそ、一度失われると取り戻すのが困難なんです。システムはバックアップから復旧できますが、地域文化は簡単には復活しません。

士幌町のIoT推進、中標津町の条例制定、標津町のヘルパー制度──これらはバラバラの取り組みに見えますが、実は全部つながっている。地域を支える「システム」の一部なんです。

これからの地方は、こういう複合的なアプローチが必要になると思います。一つの施策だけでは効果が限定的。複数の施策を組み合わせて、相乗効果を狙う。

私たちにできること

コンビニで牛乳を買うとき、産地を確認していますか?私は最近、意識的に北海道産を選ぶようにしています。微々たる貢献かもしれませんが、消費者として意思表示はできる。

ふるさと納税も活用しています。中標津町の「なかしべつ牛乳」を返礼品でもらって、家族で「牛乳で乾杯」をやってみました。家内には「何やってるの?」と笑われましたが、これも地域支援の一つです。

でも一番大切なのは、この問題を知ることだと思います。酪農の現状、地方の課題、私たちにできる支援方法──知らなければ、行動のしようがありません。

システムエンジニアとして40年、地方出身者として60年。データと向き合い、故郷を想う一人の人間として、この問題は他人事ではありません。

酪農が消えれば、確実に地方は死にます。でも逆に言えば、酪農を支えることができれば、地方には希望があるということです。

技術の力、制度の力、そして何より私たち一人ひとりの力で、この流れを変えていけると信じています。還暦を過ぎてから、こんなことを考えるようになるなんて、自分でも意外ですが──

今回、参考にしたサイト
地方版IoT推進ラボの窓口一覧
士幌町IoT推進ラボ(PDF)
北海道のIoTを知っていますか?
地域のIoTビジネス創出支援(IPA)
「地方版IoT推進ラボ」を活用しよう
全国の地域ラボ一覧
北海道士幌町基本計画(PDF)
士幌町 地方創生「推進交付金」事業の検証(PDF)
中標津町牛乳消費拡大応援条例(Wikipedia)
中標津町公式「牛乳で乾杯条例」ページ
全国初の『牛乳で乾杯条例』制定10周年と地域ブランド化
牛乳で乾杯の町!中標津町
北海道中標津町 牛乳で乾杯条例10周年記念事業
標津で農業始めませんか?(標津町農業協同組合)
搾乳や給餌以外の業務に取り組んでいる酪農ヘルパー利用事例(PDF)
酪農ヘルパーの朝(農林水産省)
有限会社ファム・エイ(酪農ヘルパー)


桜田泰憲(さくらだ・やすのり)
1964年6月生まれ、北海道目梨郡羅臼町出身。石油関係会社で現場業務を務める傍ら、webライターとして5年間活動。同僚レポーター・mikuの取材協力を得て、地方問題を中心に執筆活動を展開中。

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ケンミンSHOWが映す「地方文化の光と影」—データと現地取材で見えた真実

文:桜田 泰憲

記事執筆の経緯

石油関係の会社で働く私が、この記事を書くことになったのは偶然の出会いからだった。

知り合いが立ち上げて、私がシステムを担当しているIT企業の同じ職場に勤める全国レポーターのmiku(みく)が、地方文化をテーマにした長期取材から戻ってきた時のことだ。彼女が持ち帰った取材ノートとデータを整理する手伝いを頼まれたのがきっかけだった。

「もんじゃにシロップって本当にあるんですか?」

北海道出身の私には馴染みのない話だったが、ITエンジニアとしてのデータ分析スキルを活かして、彼女の取材資料を体系的に整理していくうちに、興味深い事実が浮かび上がってきた。

webライターとしての副業経験も5年になる私は、この貴重な取材データをもとに記事化の許可を得て、独自の分析を加えて執筆することにした。

mikuの取材で明らかになった番組の影響力

mikuが調査した『秘密のケンミンSHOW』は、2007年10月11日から放送開始され、現在まで17年以上続いている長寿番組だ。2020年3月をもって司会を務めていたみのもんたが降板し、4月からは爆笑問題の田中裕二が2代目司会に就任、タイトルも『ディスカバリー・エンターテインメント 秘密のケンミンSHOW 極』に変更された。

番組の影響力について、私がシステムエンジニアの技術を使って整理した視聴率データは以下の通りだ:

視聴率データ
  • 関東地区最高視聴率:2010年3月4日放送分の19.2%(ビデオリサーチ調べ)
  • 関西地区最高視聴率:2015年1月22日放送分の24.4%(オリコン調べ)
  • ケンミンSHOW極以降の最高視聴率:2020年4月30日放送分の13.8%

私がデータベース的にアプローチして分析したところ、この番組が地方文化の見方を根本的に変えたことが数値からも読み取れる。従来「恥ずかしい」とされていた地域の特色が、「誇るべき文化」として再評価される現象が全国で起きている。

同僚の現地取材から見えたもんじゃの真実

mikuが月島で実施した現地取材の記録を整理する中で、もんじゃの歴史について興味深い事実が判明した。

農林水産省の資料によると、食料難であった昭和20年代頃、うどん粉を溶いて醤油やシロップを加えたシンプルなもんじゃ焼きが子どもたちに広く親しまれていたという記録がある。

mikuの取材ノートには、月島の「もんじゃ近どう本店」での聞き取り内容が詳細に記されていた。戦後まもない時期に駄菓子屋の一角でもんじゃを焼いていたころからの由緒ある店だが、現在の観光客向けメニューと、かつて地元の人が慣れ親しんだ味は必ずしも同じではないという証言があった。

ITエンジニアとしての私の視点から分析すると、これは「システムの仕様変更」に似ている。元の機能(地元の子どもたちの駄菓子)から、新しい要件(観光客のニーズ)に合わせてアップデートされた結果、一部の機能が変更されたということだ。

データベース化したババヘラアイスの歴史

mikuが秋田で収集した「ババヘラアイス」に関する情報を、私がシステマティックに整理した結果がこちらだ。

一説には1948年(昭和23年)に児玉冷菓創業者の児玉正吉が、冷凍機を導入してアイスキャンデー屋を開業し、「悪くなる前に売り切る術に長けている」魚屋に委託して行商を始めたのが起源とされる。

販売形態の特徴:

販売スタイル情報
  • 販売員:中年以上の女性(ババ)
  • 道具:金属製の「ヘラ」を用いてコーンへ盛りつけ
  • 期間:降雪期を除いた春から秋(主に夏場)
  • 場所:幹線道路そばやイベント会場

私のようなシステム担当者の目で見ると、この販売システムは非常に効率的だ。移動式で在庫管理がシンプル、現金決済でトランザクションも簡潔。長年続いているのは、システムとして優秀だからだろう。

mikuの地方メディア取材から見えた温度差

mikuの取材ノートには、地方の新聞社やテレビ局関係者との会話も記録されていた。ある地方紙記者の発言として「東京のテレビ局に地元の魅力を教えられるのは複雑な気持ちです。でも、結果的に注目されるならそれでいいのかもしれません」という記述があった。

webライターとして情報発信に携わる立場から言えば、これは「情報の流通構造」の問題だ。従来は東京発のメディアが一方的に地方を「発見」していたが、SNSの普及により双方向の情報交換が可能になっている。

システムエンジニアから見た文化継承の構造

ITエンジニアとしての経験から言えば、文化の継承はシステムの保守に似ている部分がある。

レガシーシステム(古い文化)を新しい技術(メディア露出)で無理にアップデートすると、元の仕様(本来の意味)が失われることがある。しかし、何もしなければシステム(文化)自体が廃れてしまう。

重要なのは:

文化継承の工夫
  • コアな機能の保持:文化の本質的価値を維持
  • インターフェースの改善:現代的な発信方法の採用
  • 後方互換性:従来の利用者(地元民)への配慮
  • 段階的移行:急激な変更を避ける

webライターとして分析するSNS時代の情報発信

副業でwebライターをしている経験から、現在の地方文化発信について分析してみた。

SNSにより、地方からの直接的な情報発信が技術的に可能になった。これは従来の「東京→地方」という一方向の情報流通を変える可能性を秘めている。

しかし、データを見る限り、個人レベルでの発信はまだ限定的だ。TwitterやInstagramで地元文化を発信するアカウントは増えているが、フォロワー数や拡散力では従来のマスメディアに及ばない。

mikuの取材データから見る番組の功罪

同僚のmikuが17年間の番組データを分析した結果をまとめると、以下の功罪が見えてくる。

功の部分

  • 地方文化への全国的な関心の向上
  • 過疎化が進む地域への注目度アップ
  • 地元住民の文化への誇り再生

罪の部分

  • 文化の表面的な切り取りによる本質の見落とし
  • 「キャラクター化」による文化の単純化
  • 一過性のブームで終わるケースの存在

システム開発の世界では、要件定義が不十分だと後で大きな問題になる。メディアが地方文化を扱う際も、同様に「要件(目的)」を明確にすることが重要だと思う。

データエンジニアの視点から見た今後の展望

私のようなシステム担当者の目で見ると、地方文化の情報発信は技術的なインフラは整っているが、「運用」の部分で課題がある。

必要なのは:

文化継承の工夫
  • コアな機能の保持:文化の本質的価値を維持
  • インターフェースの改善:現代的な発信方法の採用
  • 後方互換性:従来の利用者(地元民)への配慮
  • 段階的移行:急激な変更を避ける

結論:システムとしての文化継承

mikuの取材データを整理し、ITエンジニアとwebライターの視点で分析した結果、一つの結論に至った。

地方文化は「生きているシステム」だということだ。固定されたデータベースではなく、常に更新され続ける動的なシステム。メディアがそれを「発見」し、全国に紹介することで新たなバージョンが生まれることもある。

重要なのは、バージョンアップの過程でコアな価値を失わないこと。もんじゃにシロップをかけて食べる文化も、ババヘラアイスの販売形態も、そこには確実に人々の生活と歴史が刻まれている。

私たちに必要なのは、表面的な「面白さ」を追求するのではなく、システムの根幹にある価値を理解しようとする姿勢だろう。データを扱うエンジニアとして、また情報を発信するライターとして、地方文化という貴重な「システム」を次世代に引き継ぐ責任を感じている。

北海道で生まれ育ち、本州の企業で働きながら地域の違いを日々感じている私だからこそ、同僚mikuの取材データから見えてきた地方文化の真の価値を、正確に伝えたいと思う。


謝辞
本記事は同僚の全国レポーターmiku(みく)の詳細な取材データをもとに執筆しました。現地での聞き取り調査や資料収集にご協力いただいた各地の関係者の皆様に深く感謝いたします。


桜田 泰憲
1964年6月生まれ、北海道目梨郡羅臼町出身。石油関係の会社でシステム担当として勤務。webライター歴5年。ITエンジニアの経験を活かし、データに基づいた分析記事を得意とする。同僚の全国レポーターmikuとの共同作業を通じて地方文化研究に取り組んでいる。

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