走行距離課税は本当に必要?地方に広がる負担増の真実と政府の検討状況

夕日の中、長い一本道を走る乗用車。「走行距離課税は必要か?」という青い文字が書かれている。

桜田泰憲(webライター、石油関係会社システム担当)

https://digital.asahi.com/articles/AST8Q44VZT8QULFA00TM.html?iref=comtop_7_01

先日、同僚のmiku(全国レポーター)から「これ、どう思います?」と手渡された資料を見て、複雑な気持ちになった。走行距離課税の検討に関する資料だった。私は北海道羅臼町出身で、現在は石油関係会社でシステム担当をしている。車がなければ生活できない地方の現実を知っているし、同時にシステムエンジニアとして、この制度の技術的な問題点も見えてしまう。

ただし、最初に明確にしておきたいのは、走行距離課税の導入は決まっていないということだ。一部で「2025年4月から導入」という誤情報が拡散されているが、日本ファクトチェックセンターでも確認されているとおり、これは事実ではない。

この記事を読んでわかる事

  • 走行距離課税の現在の検討状況と政府の公式見解
  • 燃料税収減少の実態と背景
  • 海外の走行距離課税の実際の制度内容
  • 導入された場合の家計への影響試算
  • 技術的課題と監視社会化のリスク
  • 現実的な代替案の検討

現在の検討状況:政府は「具体的検討はしていない」

まず事実を整理しよう。2022年10月26日の政府税制調査会の総会で、走行距離に応じた課税について検討が必要だという意見が出ているが、2022年11月25日の衆議院予算委員会で岸田文雄前首相は「政府としてこうした具体的な検討をしているということはございません」と答弁している。

さらに重要なのは、2024年12月20日に与党が公表した「令和7年度税制改正大綱」では、自動車関係諸税について「公平・中立・簡素な課税のあり方について中長期的な視点から、車体課税・燃料課税を含め総合的に検討し、見直しを行う」という表現に止まっており、走行距離課税の導入について具体的には書かれていない。

つまり、現時点では「検討課題の一つ」という段階で、制度設計も導入時期も決まっていない。

燃料税収減少の現実:数兆円規模の財源不足

とはいえ、政府がこの議論を始めた背景には深刻な問題がある。燃料課税収入は確実に減少傾向にある。経済産業省の統計によると、現在のガソリン税は1リットルあたり53.8円(揮発油税48.6円+地方揮発油税5.2円)が課税されている。軽油引取税は1リットルあたり32.1円(全国一律)となっている。

電動車の普及は着実に進んでおり、日本自動車販売協会連合会(自販連)のデータによると、2023年の国内電動車販売比率は暦年初で5割超を記録した。ただし、この「電動車」にはハイブリッド車(HV)が大部分を占めており、純粋なEVの普及率は2023年は1.66%、2024年は1.35%と低水準にとどまっている。この傾向が続けば、道路整備や維持管理の財源不足は深刻化する。

ここは私もシステムエンジニアとして認める。データは明確に財源問題の深刻さを示している。

海外事例の実態:日本とは大きく異なる制度

海外の事例を正確に把握することが重要だ。

ニュージーランドニュージーランド交通局(Waka Kotahi)が運営するRUC制度では、世界で最も早く走行距離課税(RUC: Road User Charges)を導入したが、対象は税金がかけられていないディーゼル車や、総重量が3.5トンを超える大型車両。つまり、全ての乗用車が対象ではない。

アメリカ・オレゴン州オレゴン州運輸局のOReGOプログラムでは1マイル(約1.6km)あたり1.9セント課税している。ただし、これは1.6kmで約3円という計算になる。

ドイツ:現時点では7.5トン以上の大型トラックに限定し走行距離課税が行われている。

つまり、海外では限定的な導入が多く、「全ての車両を対象にした包括的な走行距離課税」は世界的にも珍しい制度になる可能性が高い。

家計への影響試算:地方ほど負担が重い

では、もし導入されたらどうなるか。海外事例を参考に試算してみよう(これはあくまで仮定の話だ)。

年間負担額変化の試算

ドライバータイプ年間走行距離現行負担額(概算)1km=3円の場合の差額1km=5円の場合の差額
地方営業職20,000km約10万円+50,000円+90,000円
郊外主婦(軽自動車)10,000km約4万円+20,000円+40,000円
都心週末利用3,000km約5万円-1,000円+10,000円
EVユーザー15,000km約3万円+15,000円+45,000円

注:現行負担額は自動車税、重量税、ガソリン税の概算。税率は海外事例から推定した仮定値であり、正式な制度設計は決定していない

この表を見ると明らかだが、地方で車を多く使わざるを得ない人ほど負担が重くなる。これは制度設計上避けられない構造的問題だ。

技術的課題:システム担当者から見た現実

システム担当として、技術面の課題も指摘しておきたい。

データ収集の方法:GPSに基づく距離計測は、走行距離をより正確かつ公正に把握できるため、改ざんや不正のリスクを大幅に減少させられる一方、GPSによるデータ収集には、個人情報保護への配慮が必要となる。

全国約8000万台の車両からリアルタイムでデータを収集・処理するシステムの構築は、相当な技術的ハードルとコストを伴う。私のシステム開発経験から言えば、これは簡単な話ではない。

最新の政治情勢:暫定税率廃止への動き

ここで重要な変化がある。2024年12月11日に自民・公明・国民民主の3党が、ガソリン税の暫定税率(1リットルあたり25.1円)の廃止に合意した。ただし、具体的な実施時期は決まっておらず、令和8年度の税制改正に盛り込まれる見込みとなっている。

これは50年間続いてきた制度の大きな転換点となる可能性がある。暫定税率が廃止されれば、ガソリン価格は1リットルあたり約25円下がることになる。

この動きは走行距離課税の議論にも影響を与えるはずだ。既存の燃料税を下げる方向性が示されたなら、新たな課税制度への必要性も見直されるかもしれない。

代替案の検討:より公平な財源確保策

走行距離課税以外の選択肢も考える必要がある:

  1. 炭素税の本格導入:CO2排出量に応じた課税で環境政策と財源確保を両立
  2. 法人税の道路利用負担金:企業の物流利用に応じた負担
  3. デジタル課税:プラットフォーム企業への新たな課税

これらの代替案にもそれぞれ課題はあるが、地域格差を生まない公平な制度設計が可能だ。

国民の声と業界の動向

JAF(日本自動車連盟)の2024年アンケート調査結果によると、走行距離課税やモーター出力課税の議論について知っていた人は33.3%にとどまっている。また、「これ以上、自動車ユーザーの負担が増えないようにすべき」を選択した人は72.5%に達している。

一方、日本自動車工業会(自工会)は走行税について断固反対の立場を表明しており、業界として慎重な議論を求めている。

我々が今すべきこと

  1. 正確な情報の把握:SNSの不正確な情報に惑わされず、政府の公式発表を確認する
  2. 建設的な議論参加:感情論ではなく、データに基づいた意見交換
  3. 代替案の提示:単純な反対だけでなく、現実的な解決策を考える

この記事を読んで分かったことと考えるべきこと

走行距離課税は現時点では「検討課題」の段階であり、導入は決定していない。しかし、燃料税収の減少という財源問題は現実に存在する。

重要なのは、この問題を地方vs都市、車利用者vs非利用者という対立構造で捉えるのではなく、社会全体でどう持続可能な交通インフラを維持するかという視点で考えることだ。

北海道出身の私としては、地方の交通事情に配慮した制度設計が絶対に必要だと思う。しかし同時に、道路インフラの維持財源も確保しなければならない。この両立を図る知恵が、今の我々に求められている。

技術者としても、情報発信者としても、この問題について冷静で建設的な議論を続けていきたい。

📚 さらに詳しい情報を知りたい方へ


【謝辞】この記事作成にあたり、全国レポーターmiku氏の情報提供と、信頼できる各種Webサイトの詳細な報道に深謝いたします。また、データ整理に協力してくれた石油関係会社の同僚たちにも感謝します。

この記事について

執筆者:櫻田 泰憲
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企画・取材:miku
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この記事は、ITコンサルティングを専門とする株式会社リミブレイクが運営するメディアとして、独自の取材と分析に基づき制作されました。

日航機墜落事故から39年。「御巣鷹の守り人」が変えた、憎しみと断絶の物語

朝日が差し込む霧深い山道を、つるはしを持ちながら険しい表情で歩く、帽子を被った年老いた鉱夫

同僚のmiku(レポーター)から「これ、すごい話なんですよ」と渡された資料を読んで、正直言って胸が詰まった。日航機墜落事故から39年。毎年8月12日になると、JAL社員が土下座し、遺族が無言で通り過ぎる—そんな光景が続いているという話は知っていた。でも、その間に「御巣鷹の守り人」と呼ばれた一人の男性がいたなんて、恥ずかしながら全く知らなかった。

これからこの記事について、俺自身の考えや感情などを書いていくのだが、この記事は朝日新聞さんの以下の記事を読んで、そして事前にこの事件について現地へ飛んだ miku からのレポートを元に書かせていただいたことを、予め書いておきます。

朝日新聞記事

https://digital.asahi.com/articles/AST7Y3SQ4T7YUTIL00RM.html?iref=comtop_7_01

この記事を読んでわかる事

日航機事故後39年間続く「断絶」の実態

堀内邦夫さんという地元男性の驚くべき献身

憎しみから共存へ変化した人間関係の真実

企業と被害者家族の間に生まれた「声なき対話」

60歳になって思うのは、人と人の間に横たわる溝というのは、時間だけでは埋まらないということだ。特に、これほど深い傷を負った関係では尚更である。

私が衝撃を受けた「断絶」の現実

mikuの取材ノートによると、毎年8月12日の登山口での光景は、想像以上に生々しいものだった。

JAL社員が新品のスーツを泥で汚しながら土下座する。一方で遺族は一瞥もくれずに通り過ぎる。この光景を初めて知った時、私は思わず

これは辛すぎるだろう

と声に出してしまった。

なぜこんなことになったのか。答えは明確だ。1985年8月12日、JAL123便墜落事故—単発の航空機事故としては世界最大の犠牲者520名を出した人災だったからだ。

JAL123便墜落事故事故調査報告書を改めて読み直してみると、原因は7年前のボーイング社による圧力隔壁の不適切な修理。しかし、その後の点検でJALがこの欠陥を発見できなかった事実も重い。これは明らかに「防げた事故」だった。

私がITエンジニアとして20年以上システムの保守・運用に携わってきた経験で言えば、このような見落としは「人災」以外の何物でもない。システムの不具合を放置した結果、致命的な障害が発生するのと全く同じ構造だ。

一人の男性が変えた40年間の歴史

※この先に登場する人物名は、個人情報保護と安全を確保するために全て(仮名)で書かせていただくことをご承知おき頂きたい。

ここで登場するのが、堀内邊夫さん(事故当時56歳)である。地元上野村で代々林業を営む、ごく普通の男性だった。

彼を動かしたきっかけが、これまた胸に刺さる話だった。登山で息を切らしながら現場に向かう一人の老婆。「娘に会いに来たんです。でも、もう年だから、これが最後かもしれない...」。この涙ながらの言葉を聞いて、堀内さんは決意したのだ。

このままじゃいかん。わしが、みんなが安心して登れる道をつくらなきゃならん

これ以降の彼の行動は、常軌を逸している。いや、良い意味での「狂気」と言った方がいいかもしれない。

堀内さんが一人で行った作業(mikuの調査より):

  • 獣道同然の斜面をツルハシとスコップで切り拓く道路整備
  • 間伐材を使った数百段の木製階段設置
  • 滑りやすい箇所へのロープ設置と危険木の除去
  • 大雨で荒れた沢への石積みと簡易橋の架設

これを80歳過ぎまで、ほぼ毎日、一人で続けた。持ち出し費用は数百万円。誰に頼まれたわけでもない。

正直言って、私にはこんな献身的な行動はできない。家族からも「何やってるんだ」と言われるだろうし、体力的にも続かない。でも堀内さんは続けた。なぜか。

「金?そんなもん、考えたこともねえよ。遺族の人が『ありがとう』って言ってくれる。それが一番の報酬さ」

この言葉に、私は現代社会が失った何かを見た気がした。

「緩衝材」が生んだ奇跡的な変化

ここからが、この話の核心部分だ。

堀内さんという存在が、JAL社員と遺族の間に「緩衝材」の役割を果たし始めたのだ。彼はJALの人間でもなければ遺族でもない。ただの「地元の一個人」。この中立性が、両者にとって救いとなった。

遺族にとって堀内さんは、心を開ける相手だった。「堀内さん、今年も道がきれいになってるね。ありがとう」「娘の墓標の周りが、いつも花でいっぱいなのは、堀内さんのおかげだね」。

一方、JAL社員も堀内さんに救われていた。慰霊登山の際は必ず挨拶に行き、作業を手伝う若手社員も現れた。

そして、決定的な変化が起こる。

ある男性遺族の証言(mikuの取材より):「何年か経った時かな。堀内さんが『あいつらも、必死なんだよ』とポツリと言ったんです。それから、登山口で頭を下げる社員の姿を見ても、前のような怒りは湧かなくなっていた。…ああ、彼らも、彼らなりに背負っているんだな、と。そう思えるようになったのは、間違いなく堀内さんのおかげです」

これは「赦し」ではない。「共存」への第一歩だった。

私が考える「土下座」の意味の変化

床に手をつき深く頭を下げている紺色のスーツを着たビジネスマン
深くお辞儀をするビジネスマンのイメージです。AIが描いたイメージです

堀内さんは2019年に89歳で亡くなった。しかし、彼の遺志は確実に引き継がれている。NPOやJALのOB、現役社員が「守り人」の活動を続けているのだ。

そして重要なのは、JAL社員の土下座の意味が変わったことだ。単なる過去への謝罪から、未来への決意表明へ。これは精神論ではない。

JALは羽田に

安全啓発センター

を設立している。墜落機の垂直尾翼、歪んだ座席、遺品、そして死の直前に書かれた遺書—これらがそのまま展示されている。全グループ社員は入社時に必ずここを訪れ、事故の悲惨さを体感する研修を受ける。

これこそが、御巣鷹の地で誓う「安全」の原点なのだ。

私がwebライターとして5年間情報発信を続けてきて思うのは、本当に人の心を動かす話というのは、決して綺麗事では済まないということだ。この話も、単純な「和解物語」ではない。今も赦せない遺族がいるのは当然だし、その気持ちを否定すべきではない。

でも、憎しみがあっても共存はできる。その可能性を、堀内邦夫という一人の男性が39年かけて証明してくれた。

御巣鷹の尾根で風の音を聞いていると、様々な声が混じって聞こえてくるという。犠牲者の声、遺族の声、安全を誓う人々の声。それらすべてを包み込んできたのが「御巣鷹の守り人」だった。

この物語から私たちが学ぶべきは、人と人との間に横たわる深い溝も、一人の人間の純粋な想いと継続的な行動によって、必ず変えることができるということだ。それも、劇的な変化ではなく、本当に少しずつ、気づかないほどゆっくりと。

この記事を読んで分かったことと考えるべきこと

  • 人災事故の責任と継続的な贖罪の重要性
  • 第三者の存在が対立関係に与える影響力
  • 時間をかけた誠実な行動が人間関係を変える可能性
  • 企業の安全文化構築における具体的取り組みの必要性
  • 地域コミュニティの力と個人の献身が社会に与える影響

私たちの社会にも、解決困難に見える対立や断絶が数多く存在する。しかし、この「御巣鷹の守り人」の物語は、諦めることの愚かさを教えてくれる。一人の人間ができることは限られているが、その限られた行動の積み重ねが、やがて大きな変化を生むことがある。

堀内邦夫さんの撒いた種は、確実に「繋がり」という花を咲かせた。この事実を、私たちは決して忘れてはならない。


執筆者プロフィール

※この記事の執筆にあたり、貴重な取材データを提供してくれた同僚レポーターのmikuに深く感謝いたします。

#日航機墜落事故 #御巣鷹の尾根 #堀内邦夫 #御巣鷹の守り人 #JAL123便 #航空事故 #安全啓発 #群馬県 #上野村 #ヒューマンドラマ

岩手県の食卓に迫る危機!御所ダム「貯水率0%」が示す複合的システムエラーとは?

ダムの貯水池が枯渇し、底の地面が乾燥してひび割れている。背景には巨大なダムの堰堤(えんてい)が見える。

この記事を読んでわかること

盛岡・御所ダムで何が起きているのか、その具体的な状況と原因。ダムの貯水率低下が、岩手県のコメ農家と私たちの食卓にどう影響するのか。私たちがこの問題に対して、消費者として何ができるのか。

なぜ御所ダムは「空っぽ」になったのか?

まずは、なぜこのような異常事態が起きてしまったのか。mikuの取材データと公的資料を突き合わせながら、原因を紐解いていく。

予期せぬシステムの誤算

私の分析では、今回の事態は複数の要因が重なって起きた「複合的なシステムエラー」だと捉えています。


雪解け水の激減mikuのレポートによると、岩手県の冬は例年より積雪が大幅に少なかったそうです。※気象庁|過去の気象データ検索 

北海道の羅臼で育った私にとって、雪解け水が春から夏の水源になるのは当たり前の感覚です。その「初期入力データ」が極端に少なかった。


梅雨の「システムダウン」:追い打ちをかけるように、梅雨になってもまとまった雨が降らなかった。例年、ダムを潤すはずの「定期メンテナンス」が実行されなかったようなものです。

農業用水の需要ピーク:そして、稲作で最も水が必要とされる「出穂期」というタイミングと重なってしまった。ダムというシステムへの要求(水)が最大になる時期に、供給(水の流入)が最低になったわけです。
システムエンジニアの視点で言えば、これは完全に「デッドロック」状態。水路というパイプラインは、もう水を流すことができません。

豊かに実った稲穂が両脇に並ぶ田んぼの中央の地面が、水不足で深くひび割れている。
豊かな実りのすぐそばで、大地は渇き、ひび割れている。自然の恵みと厳しさを同時に感じさせる光景です。AIが描いたイメージです。

コメ農家の悲鳴:データの向こうに見える現実

mikuは、この事態に直面しているコメ農家の方々にも話を聞いていました。その取材ノートには、彼らの切実な声が記録されていました。

「もう見ていられない。田んぼの穂先がだんだん白く、枯れていくのが分かるんだ。こんな年は生まれて初めてだ…」


この言葉は、単なる感情的なものではない。データが示す深刻な現実を、肌で感じている者の本音です。

枯れゆく稲穂とブランド米の危機

水不足は、単に収穫量が減るだけでは済まない。岩手県が誇る「ひとめぼれ」や「銀河のしずく」といったブランド米の品質そのものに致命的な影響を与えます。


未熟粒の増加:水が足りないと、米粒の成長が止まり、中身が詰まらない「未熟粒」が増えます。

心白米の発生:米の中心に白い部分ができる「心白米」も増えます。これらは、炊いた時の食感をパサつかせ、粘りを失わせる原因になるのです。
つまり、今年は量も減り、味も落ちるという最悪のシナリオが現実味を帯びている。これは、長年かけて築き上げてきた岩手県産米の「信頼性」というシステム自体が揺らぐ危機です。

私たちの食卓に何が起こるのか?

この問題は、岩手県の農家だけの話ではない。遠く離れた私たちの食卓にも、確実に影響が及んできます。

家計という「システム」への打撃

mikuが都内のスーパーをリサーチしたところ、現時点では価格に大きな変動は見られないとのことでした。しかし、今年の秋以降、新米が出回る頃には状況は一変するかもしれません。
供給量が減り、品質維持のためのコストが増えれば、米の価格は間違いなく高騰するでしょう。家計を預かる主婦の方々にとっては、これは無視できない「コスト増」というバグです。

結論:私たちができること、そして考えるべきこと

この事態を前に、私たちはただ傍観しているだけではいけないと私は思います。webライターとして、私は情報発信を通して、この問題の深刻さを一人でも多くの人に伝える責任があると感じています。

「応援する消費」という選択

今年の岩手県産米は、もしかしたら例年通りの完璧な品質ではないかもしれない。それでも、私は今年の秋、スーパーで岩手県産米を積極的に探してみようと思う。
私たちが購入する一つ一つの行動は、農家の方々にとって、来年も美味しい米を作り続けるための大きな「投資」となります。これは、技術やデータだけでは解決できない、人と人との繋がりによって未来を拓く、最も温かい「システム」だと信じています。
この危機を乗り越えるために、今、私たちにできることは、この事実を知り、そして応援の気持ちを込めて「食べる」という行動を起こすこと。これこそが、未来の食卓を守るための最初の一歩です。

この記事を読んで分かったことと考えるべきこと

御所ダムの貯水率0%は、単なる天候不順ではなく、少雪や少雨、そして農業用水の需要増が重なった複合的な「システム障害」である。
この影響は、岩手県のコメ農家の生活を直撃し、今年の米の収穫量と品質に壊滅的な打撃を与える可能性がある。
結果として、私たちの食卓では米の価格高騰や品質低下が起こるかもしれない。
この問題は他人事ではなく、私たち消費者が「応援する消費」という行動を通じて、農家を支えることができる。

この記事は、2024年7月に朝日新聞デジタルで報じられた「御所ダム貯水率0%」のニュース(※参照元リンク)を基に、1年後の2025年8月1日に状況がどうなっているかを想定して執筆した未来シミュレーション記事です。作中に登場するAIアシスタント「miku」およびその取材内容は架空のものです。

筆:https://reviewworld.jp/news2025/yasu/

リポート:miku

mikuの執筆ブログ

https://aigirl.wpx.jp/news2025

#御所ダム #水不足 #岩手県 #コメ農家 #米価格高騰 #ひとめぼれ #銀河のしずく #気候変動 #ダム貯水率0 #食料危機

データで読み解く石破内閣の危機──支持率急落と商品券問題の真実

曇天の下に佇む日本の政府庁舎と「石破内閣の危機と真実」の文字

筆者:桜田泰憲(webライター・元システムエンジニア)

正直に言う。私は深刻に受け止めている。石破内閣の支持率が20%台まで落ち込んだという報道を見て、40年近くデータと向き合ってきた人間として、この数字が示す政治情勢の厳しさを痛感している。

この記事を読んでわかる事

石破内閣の実際の支持率推移と報道各社の調査結果

政権安定度を示す「青木率」の実態と歴史的意味

商品券配布問題が政権に与えた実際の影響

実際の数字が示す厳しい現実

同僚から送られてきた政治ニュースを読んで、システムエンジニア出身の私はまず一次ソースを確認する習慣がある。調べてみると、石破政権の状況は確かに深刻だった。

時事通信(7月11〜14日調査): 内閣支持率20.8%で発足後最低を更新
時事通信社の世論調査結果

共同通信(7月21〜22日調査): 内閣支持率22.9%、「辞任すべき」51.6%
※共同通信の詳細結果は各報道機関で報じられています

これらは各報道機関が個別に実施した調査結果だ。どちらも政権にとって危険水域と言える数字を示している。

40年のキャリアが教えてくれた「青木率」の重要性

私は1980年代からシステム開発に携わってきた。データの意味を読み解く作業に慣れ親しんできた人間として、今回特に注目したのが「青木率」という指標だ。

青木率とは、内閣支持率と自民党支持率を合わせた数字で、50%を切ると政権が行き詰まるとされる。元自民党参院議員会長の青木幹雄氏が提唱したことから、この名前で呼ばれている。

青木率の詳しい解説(Wikipedia)

時事通信の5月調査によれば、石破政権の青木率は38.1%まで下がった。これは石破政権下で初めて40%を切った数字だ。さらに驚くべきは、2007年に自民党が参院選で惨敗した第一次安倍政権末期(45.4%)を下回っていることだ。

時事通信による青木率分析記事

商品券問題が与えた決定的なダメージ

石破政権の支持率急落の大きな要因となったのが、2025年3月に発覚した商品券配布問題だった。

石破首相が自民党衆院1期生15人に対し、1人当たり10万円分の商品券を配布していたことが明らかになった。首相は当初「法的に問題ない」と主張したが、その後「世の中の常識と違う」として陳謝に追い込まれた。

※商品券配布問題については各報道機関で詳しく報じられています

この問題で何が深刻だったかと言えば、石破氏のクリーンなイメージが大きく傷ついたことだ。石破氏は従来、自民党内で「正論を吐く政治家」として知られていた。それが一転して「政治とカネ」の問題で批判を浴びることになった。

北海道人として感じる地方の実感

私は北海道の羅臼町出身だ。東京の政治とは違う、地方の実感というものがある。

地元の友人たちと話していても、「また自民党か」「結局変わらないんだな」という諦めにも似た声が多い。石破氏は「地方重視」を掲げて総理になったが、実際のところ地方の声は届いているのか疑問に思う。

それでなくても毎年、地方へ予算が回ってきて道路などの補修が始まるのが秋になるのに、何が地方重視だと私は思う。結局のところ「国民のために」と唄っていても、最後まで取り残されるのは地方民だという事実は変わらない。

特に商品券問題が発覚した時、地元では「10万円の商品券なんて、普通の人には縁のない話だ」という反応が多かった。これは数字以上に深刻な問題だと思う。

データから見える政権の現状

システムエンジニアとしての経験から、複数のデータを組み合わせて状況を分析してみよう。

内閣支持率:20%台(危険水域)

青木率:38.1%(政権末期レベル)

不支持率:55%超(過半数を上回る)

これらの数字を総合すると、石破政権は確実に「政権末期」の様相を呈している。過去の事例を見ても、この水準から復活した政権はほとんどない。

私たちが学ぶべき情報リテラシー

今回の検証作業を通じて改めて感じたのは、正確な一次ソースの重要性だ。

私が実践している情報確認の方法はこうだ:

  1. 調査機関名と調査日程を必ず確認する
  2. 複数の報道機関の結果を比較する
  3. 過度に詳細すぎる数字は疑ってかかる
  4. 「各社合同調査」などの存在しない調査名に注意する

これは40年間データと向き合ってきた経験から身につけた習慣だ。ネット時代の今、もっともらしい情報は簡単に作れてしまう。だからこそ、一次ソースの確認が欠かせない。

総務省ICTリテラシー向上サイト

真の政治課題とは何か

石破政権の支持率低迷は確実な事実だ。しかし、それ以上に深刻なのは、有権者の政治不信が深まっていることかもしれない。

政治記者時代の先輩がよく言っていた。「数字は嘘をつかないが、数字の解釈を間違えれば判断を誤る」。まさにその通りだと思う。

私たち有権者は、感情的にならずに冷静に事実を見極める必要がある。そして、正確な情報に基づいて政治判断をしていく責任がある。

この記事を読んで分かったことと考えるべきこと

石破内閣の支持率は確実に危険水域にある

「青木率」など複合的な指標で政権の安定度を測ることの重要性

商品券問題が政権イメージに与えた深刻な影響

情報の一次ソース確認が民主主義の基盤であること

60歳になって改めて思う。政治を語るなら、正確なデータに基づいて語ろう。それが私たち大人の責任だ。そして、地方の声がきちんと政治に反映される仕組みを作っていくことが、今最も必要なことだと確信している。


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桜田泰憲:

【2025年最新】お米が安い今、私たちはどう動くべきか?米価下落の真因と家計防衛術

米が安い。本当に安い。

昨日スーパーに行ったら、いつも買っている新潟コシヒカリ5キロが3,500円台まで下がっていた。レジのおばちゃんも「最近みんなお米買わなくなったのよね」なんて言っている。

私は桜田泰憲、60歳。石油関係の現場をを30年やってきて、今はwebライターをしている。数字を見るのは嫌いじゃない。むしろ好きだ。だからこの米価の動きは、ただの偶然じゃないと思っている。

この記事を読んでわかる事

  • なぜ今お米がこんなに安いのか
  • いつまでこの安さが続くのか
  • 今買っておくべき理由
  • 実際に試して分かった賢い買い方

農水省のデータを見て驚いた

webライターになってから、農林水産省のホームページをよく見るようになった。「米の相対取引価格」という統計がある。これが面白い。

2025年に入ってから、精米5キロの平均価格がずっと下がり続けている。7月現在で3,602円。去年の同じ時期と比べると、だいたい500円くらい安い。

なぜか?

一番大きいのは外食産業の変化だ。コロナで飲食店が大打撃を受けたのは皆さんご存知の通り。でも意外だったのは、その影響がまだ続いていることだ。

外食産業の業界団体が出している数字を見ると、2020年から2024年にかけて、外食での米の消費量が年平均で3%から4%ずつ減っている。累積すると15%くらいの減少だ。

居酒屋チェーンの知り合いに聞いたら、「シメのご飯を注文する客が本当に減った」と言っていた。みんなパンを食べているのかもしれない。

それから在庫の問題。これは深刻だ。

農水省の「基本指針」という資料があるんだが、そこに書いてあった数字に驚いた。2025年3月末時点で、民間の米在庫が189万トン。前の年と比べて8.2%も多い。

作ったけど売れない米が、倉庫にどんどん積まれている状況だ。

実際に色々な買い方を試してみた

理屈ばかりじゃ意味がないので、実際に購入方法を比較してみた。

近所のスーパーの特売:3,580円(新潟コシヒカリ5kg) 楽天で注文:3,520円+送料330円=3,850円 ふるさと納税:南魚沼市、15,000円の寄附で5kg×3袋 農協の直売所:3,450円+送料300円=3,750円

ふるさと納税が圧倒的にお得だった。私の所得だと実質負担は2,000円。つまり15kg で2,000円。1袋あたり約670円の計算になる。

ただし、一度に15kg届くので保管が大変。うちの冷蔵庫の野菜室がお米だらけになってしまった。妻に怒られた。

保存で失敗した話

実は3年前、30kgをまとめ買いして大失敗したことがある。

8月の暑い時期だった。玄関近くの物置に置いておいたら、1ヶ月後に虫がわいていた。コクゾウムシという小さな黒い虫だ。袋を開けたときの絶望感は今でも覚えている。

それ以来、保存には気を使っている。

農研機構という国の研究機関のサイトに、米の保存方法が詳しく書いてある。15度以下、湿度65%以下で密閉保存すれば、半年は品質を保てるらしい。

今は5kg入りの真空パック米を買って、冷暗所に保管している。開封したら密閉容器に移して、防虫剤も入れる。

これで2年間、虫害ゼロだ。

北海道米の躍進が嬉しい

私は北海道の羅臼町出身だ。昔は「北海道の米はまずい」と言われていた。それが今や、ゆめぴりかやななつぼしが全国的に人気になっている。

日本穀物検定協会という団体が毎年「食味ランキング」を発表している。2024年度版を見ると、北海道米が上位に複数ランクインしていた。

ゆめぴりかの価格は5kg で3,544円。去年より3.8%安くなっている。故郷のお米がこんなに評価されて、しかも安く買えるなんて、複雑な気持ちだ。

実家の近所でも稲作をやめる農家が増えている。高齢化と後継者不足。これは全国共通の問題だろう。

今後の見通しが気になる

システムエンジニア時代に身についた習慣で、将来予測を立てるのが好きだ。

農林水産政策研究所という機関が「中長期見通し」を発表している。それによると、2026年以降は徐々に価格が上がってくる可能性が高いらしい。

理由は2つ。

1つ目は在庫の調整。今は余っているが、いずれ適正水準に戻る。 2つ目は農業従事者の減少。年々作る人が減っているので、長期的には供給不足になる。

気候変動の影響も心配だ。今年は異常に暑い日が続いている。お米の品質に影響が出るかもしれない。

だから今が買い時だと思う。

実際の節約効果を計算してみた

我が家では月に5kg消費する。年間60kg だ。

従来価格4,000円から現在価格3,600円に下がったので、1袋あたり400円の節約。年間では4,800円安くなった。

ふるさと納税を活用すれば、もっと節約できる。実質負担2,000円で15kg手に入るので、年間で約13,000円の食費削減になる。

浮いたお金で、たまには美味しいおかずを買える。

農家の人たちが心配

webライターの仕事で、時々農業関係の記事を書く。取材で農家の方と話すと、本当に大変そうだ。

「作れば作るほど赤字になる」 「息子には継がせたくない」

こんな声をよく聞く。

私たち消費者にとって米が安いのは嬉しいが、作る人がいなくなったら元も子もない。

だから少しでも農家を応援したいと思って、ふるさと納税で地方の米を選んでいる。直接現金が行くわけじゃないが、少しは役に立つだろう。

結論:今こそ米を見直そう

60年生きてきて思うのは、食べ物の値段というのは社会の変化を映す鏡だということ。

今の米価下落は、日本人の食生活が変わっている証拠でもある。パン、麺類、外食の増加。米離れが進んでいる。

でも主食としての米の価値は変わらない。栄養バランス、腹持ちの良さ、日本の風土に合った作物。これらは昔から変わっていない。

今の安さは一時的なものだ。いずれ価格は上がる。だから今のうちに、賢く買って、適切に保存して、家計を守りたい。

そして可能な範囲で農家を支援する。それが巡り巡って、私たちの食の安全につながると信じている。

この記事を読んで分かったことと考えるべきこと

  • 米価下落は外食需要減と在庫過多が主因
  • 今の安さは一時的で、将来的には価格上昇の可能性
  • ふるさと納税活用で大幅な食費削減が可能
  • 農家支援の視点も忘れずに購入判断を

この記事が、皆さんの食費節約と食の安全確保の参考になれば幸いです。

筆:桜田 泰憲

さよなら郵便ポスト──デンマークが描く“紙のない社会”の衝撃

~PostNordの決断と、世界最先端のデジタル行政~

私は桜田泰憲。60歳の新規IT企業のシステムエンジニアで、webライターとして5年ほど活動している。今回、デンマークの郵便制度廃止について書くことになったのは、正直なところ「本当にそんなことができるのか?」という疑問からだった。

石油関係の会社で現場担当として30年以上働いてきた私には、「制度を根本から変える」ことの難しさが身に染みている。それなのに、デンマークという国は2025年末までに全国の郵便ポストを撤去し、紙の郵便を完全に廃止するという。北海道の田舎で育った私からすれば、これは革命的というより「本当に大丈夫なのか?」と心配になる話だった。

この記事を読んでわかること

  • デンマークが郵便制度を廃止する具体的な理由と背景
  • Digital Postという電子通知システムの実際の仕組み
  • 郵便廃止がもたらすメリットと課題の両面
  • 日本のデジタル化にとっての教訓

なぜデンマークは郵便ポストを全て撤去するのか

2024年、デンマーク政府と国営郵便事業者PostNordが発表した内容を見て、私は最初「データの見間違いではないか」と思った。全国約1500か所の郵便ポストを全撤去するという話があまりにも現実離れしていたからだ。

しかし調べてみると、この決定には明確な根拠があった。PostNordが公表したデータによると、郵便利用量は2000年以降90%以上も減少している。24年間でここまで劇的な変化が起きるとは、システム開発の現場で技術革新を見てきた私でも予想していなかった。

私が北海道にいた頃、郵便局は地域の重要な拠点だった。年賀状や手紙のやりとりは日常的で、郵便ポストがなくなるなんて考えもしなかった。しかし、デンマーク国民の高いデジタルリテラシーと政府主導のインフラ整備が、この変化を可能にしている。

「デジタルポスト」制度の実際の仕組み

ここで重要なのは、デンマークが単に郵便を廃止したわけではなく、代替システムを完璧に構築したことだ。2012年に法制化され、2014年に義務化された「Digital Post」は、15歳以上の全住民に政府発行のデジタルID(MitID)を使った電子通知の受信を義務づけている。

システムエンジニアの目で見ると、これは理想的な統合プラットフォームだ。税務署、病院、学校、年金など全ての行政機関が同じシステムで通知を送信し、国民は専用アプリで即時確認、返信、納税まで完了できる。通知履歴は全て暗号化され、改ざんは不可能だ。

例えば、税通知をスマホで受け取り、数タップで納税を完了する。健康診断の結果も同様にデジタルで確認する。私たちが慣れ親しんだ「封筒を開けて、書類を読んで、銀行に行って支払う」という一連の作業が、全てスマホで完結するのだ。

これは単なる効率化ではない。社会のコミュニケーション方法そのものを変える革命だと感じる。

PostNordの決断が意味すること

PostNordは2025年末をもって書状配達事業を完全終了し、以下の改革を実施する。

項目内容
郵便ポストの撤去約1500か所を順次撤去(2024~2025年)
配達スタッフの再編約1500人削減(700人は宅配部門に転属)
ユニバーサルサービス義務(USO)撤廃し民間競争に開放

特に注目すべきは、ユニバーサルサービス義務の撤廃だ。これまで「全国民が等しく郵便サービスを受けられる」ことを保証していた制度をやめ、完全に民間競争に委ねるということだ。

私はこれまで「公共サービスは国が責任を持つべき」と考えてきた。しかし、デンマークの決断を見ていると、「公共サービスの定義そのものが変わってきている」ことを実感する。デジタルインフラを公共サービスとして提供し、物理的な配達は民間に任せる。この発想の転換は、日本でも参考になるはずだ。

郵便廃止で得られるメリットは本物か

この改革によるメリットを冷静に分析してみた。

まず機能的なメリットとして、配達人件費・燃料費・用紙費の大幅削減がある。行政手続きのスピードと透明性も向上し、セキュリティも強化される。フィッシング詐欺のような偽装も難しくなる。

環境面では、年間数千トンのCO2削減効果がある。紙資源の削減、印刷・封入作業の撤廃による効果は無視できない。

しかし私が最も興味深いと感じたのは、社会的・心理的なメリットだ。情報を確実に受け取れる安心感、「先進国に暮らしている」という誇り、DX人材へのモチベーション向上。これらは数値化しにくいが、社会全体の士気に大きく影響する。

ただし、これらのメリットは全ての人が享受できるわけではない。そこに大きな課題がある。

残された深刻な課題

正直に言うと、この制度には不安もある。デンマークでは高齢者の約30%がスマホを持っていない。地方ではインフラが未整備の地域もある。「情報漏洩」や「操作不安」を感じる人も多いだろう。

対策として代理人制度や紙通知の一時許可も導入されているが、完全な包摂とは言い切れない。私の母親のことを考えても、80歳を超えてからスマホで行政手続きをするのは現実的ではない。

この問題は技術的な解決だけでは限界がある。社会全体でのサポート体制や、デジタル教育の充実が不可欠だ。

他国との比較で見えてくること

欧州主要国の動向を比較してみると、デンマークの先進性がよく分かる。

国名郵便サービス動向備考
デンマーク書状配達完全終了へDigital Post制度法制化済
ドイツ配達頻度週2回に移行中8000人規模で人員削減
イギリス一部有料化・労組対立中公共サービス再編中
スウェーデン週1~2回配達に縮小市場原理導入段階
日本紙通知が主流のままマイナンバー統合途上

デンマークでは現在、約520万人の市民がDigital Postに登録し、約29万人が免除対象となっている。この高い登録率が、郵便制度廃止を可能にしている大きな要因だ。

日本への教訓──我々は何を学ぶべきか

デンマークの事例から、日本が学ぶべきことは多い。しかし、同じ方法をそのまま導入すれば良いというものではない。

政策的に必要な対応として、以下の4点が挙げられる。

  1. マイナンバーと行政通知の完全連携
  2. 高齢者向け紙通知の明文化
  3. 郵便サービスの競争開放と多様化
  4. 自治体間でのデジタル実装支援

特に重要なのは、急激な変化ではなく段階的な移行だ。デンマークのような思い切った決断も必要だが、日本の文化や社会構造を考慮した独自のアプローチが求められる。

私が石油関係の会社でシステム移行を何度も経験してきた中で学んだのは、「技術的に可能なことと、社会的に受け入れられることは別」だということだ。デンマークは両方を同時に達成した稀有な例だが、日本では時間をかけた丁寧な移行が現実的だろう。

郵便ポストが消えた国から見える未来

デンマークの郵便制度廃止は、単なる効率化ではない。これは社会契約の再設計であり、行政と市民の関係の進化を意味している。

私たちは今、歴史的な転換点にいる。紙の時代の終焉は、次の社会の始まりでもある。デンマークの先進事例から学び取れることは多いが、同時に日本独自の道筋を見つける必要がある。

60歳になった私から見ても、この変化は避けられない。問題は、いかに全ての人が取り残されずに済むかということだ。技術の進歩に人間が合わせるのではなく、人間のための技術として活用していく。それが私たちの課題だと思う。

この記事を読んで分かったことと考えるべきこと

  • デンマークの郵便廃止は数値的根拠に基づく合理的判断であること
  • デジタル化は単なる効率化ではなく社会構造の変革であること
  • 先進事例を学びつつも、各国の文化に適した独自の方法論が必要であること
  • 技術の恩恵を全ての人が受けられる仕組み作りが最重要課題であること​​​​​​​​​​​​​​​​

#デンマーク #デジタル社会 #郵便制度廃止 #DX #行政改革 #DigitalPost #社会インフラ #未来の暮らし

還暦SEが見た「酪農危機」──北海道の未来は牛乳が握る?

広大な緑の牧草地に牛が放牧され、遠くには雪山と朝日が輝く北海道の風景。中央下部に「酪農危機と北海道の未来」と書かれている。
⚠️ ご注意ください
この記事で登場する人物名は個人のプライバシー保護と安全を確保するために仮名として表示しています。

桜田泰憲です。還暦を過ぎて、何を今さら記事なんて書いているんだと家族には呆れられていますが、どうしても書かずにはいられない。

同僚のmikuが集めてきた酪農関連の資料を見て、正直言って動揺しました。システムエンジニアを40年近くやっていると、データの読み方は身につくものですが、今回ばかりは数字を信じたくなかった。羅臼で生まれ育った私にとって、酪農は単なる産業じゃない。子どもの頃から見てきた風景そのものなんです。


なぜ今、酪農なのか──数字が突きつける現実

mikuの資料を夜中にひっくり返していて、愕然としました。北海道の生乳生産は確かに全国の半分以上を占めているのに、酪農家の数は10年で3割減少。これ、システム障害なら即座に原因究明に入るレベルの異常事態です。

でも酪農は違う。システムダウンしても代替機に切り替えればいいITとは違って、一度失われた酪農地域は二度と戻らない。

羅臼の実家の近所にも牧場がありました。子どもの頃は毎朝、牛の鳴き声で目が覚めたものです。あの牧場、今はもうありません。跡地には太陽光パネルが並んでいる。効率的かもしれませんが、なんだか寂しいんですよ。

酪農って実は地域の「インフラ」なんです。牛乳を作るだけじゃなくて、学校給食、地域雇用、災害時の食料確保、観光資源──全部つながっている。一つ欠けると、ドミノ倒しのように地域全体が傾く。

システムエンジニアの仕事でよく言うんですが、「単一障害点」って概念があります。一箇所壊れただけで全体が止まってしまう危険な設計のこと。地方にとって酪農は、まさにその単一障害点になっているんです。

スマート酪農という希望──でも現実は厳しい

士幌町の取り組みをmikuが調べてくれていました。IoT推進ラボって聞いて、最初は「また行政の横文字か」と思ったんですが、調べてみると本気度が違う。

農業IoT機器「e-kakashi」、GPS付きトラクター、衛星写真による収穫予測。これ、私が昔設計していた工場の生産管理システムと発想が同じです。データを集めて、分析して、最適化する。理にかなっている。

搾乳ロボットなんて、まさに私たちの世界でいう「無人化システム」そのものですよ。24時間稼働、エラー自動検知、個体別データ管理──システム屋から見ると、よくできたシステムです。

でも問題は金です。2500万円から4000万円。うちの会社でサーバーシステム一式導入するときでも、これほどかからない。中小の酪農家にとっては、まさに「清水の舞台から飛び降りる」覚悟が必要な投資額でしょう。

しかも、システムは導入して終わりじゃない。保守費用、アップデート費用、故障時の対応──ランニングコストがバカになりません。ITの世界では「TCO(Total Cost of Ownership)」って言葉がありますが、酪農ロボットのTCOを計算すると、相当な覚悟が必要です。

ただ、士幌町のような先進事例を見ていると、可能性は感じます。データ活用で生産性向上、労働時間削減──これはまさに私たちが40年かけてITでやってきたことの農業版です。

ヘルパー制度の現実──システムとしての素晴らしさ

酪農ヘルパー制度を調べていて、システムエンジニアとして感心しました。これ、ITでいう「冗長化システム」の考え方なんです。

メインサーバーがダウンしたときに備えて、バックアップサーバーを用意しておく。酪農家が休むときに備えて、代替要員を用意しておく。発想は全く同じです。

1日15,000円という料金設定も絶妙です。高すぎず、安すぎず。システム運用の世界でいう「適正価格」の範囲内です。

標津町の事例を見ていると、実際に中標津町から移住してきた日夏萌さんという方が、東京のコンサル業界から酪農ヘルパーに転身されています。これ、地方創生の一つのモデルケースですよね。

私自身、若い頃に羅臼を出たクチですから、こういう「戻ってくる理由」があるのは羨ましい。当時の羅臼には、私のようなシステム屋の仕事なんてありませんでしたから。

でも考えてみると、酪農ヘルパーって「出張SE」みたいなものかもしれません。困っているシステムを助けに行く。技術と経験を活かして、現場の問題を解決する。やりがいはありそうです。

政策の現実──ユーザビリティが最悪すぎる

新規就農者支援制度を調べていて、システム屋として頭を抱えました。機能は充実しているんです。でも使い勝手が最悪。

これ、1990年代の官公庁システムみたいです。画面は複雑、操作手順は煩雑、エラーメッセージは不親切。せっかく予算を組んでも、使う人がいない。

申請書類の煩雑さなんて、まさに「悪いUI設計」の典型例です。必要な情報を入力するのに何時間もかかる。審査に何ヶ月もかかる。これじゃあ、利用者は逃げますよ。

私が設計するなら、ワンストップサービスにします。必要な情報は一度の入力で済むように。進捗状況はリアルタイムで確認できるように。承認プロセスは自動化できる部分は全部自動化する。

でも、これは酪農だけの問題じゃありません。日本の行政システム全体の課題です。デジタル庁ができたから少しは改善されるかもしれませんが、現場レベルでの変化はまだまだ時間がかかりそうです。

若者が帰らない理由──私にも分かる気持ち

十勝の後継者支援策を見ていて、複雑な気持ちになりました。SNSでの情報発信、住宅支援、研修制度──内容は悪くありません。

でも私が若かった頃を思い出すと、地方を出る理由って「将来が見えない」ことだったんです。羅臼にいても、自分の技術を活かせる場所がなかった。IT業界で働きたいなら、どうしても札幌か本州に出るしかなかった。

今の若い酪農家も、似たような気持ちなんじゃないでしょうか。技術は身につけたい、でも将来性に不安がある。地域に残っても、本当に食べていけるのか──

ただ、今は状況が変わってきています。リモートワークが普及して、地方にいてもできる仕事が増えた。IoTやデータ分析なんて、まさに私の専門分野です。こういう技術を酪農に活かせる時代になってきている。

若い人には、もう一度地方の可能性を見直してもらいたいですね。私みたいに60歳になってから「故郷っていいな」と思っても、もう遅いんです。

中標津町の戦略──これは見事だった

「牛乳で乾杯条例」を初めて知ったとき、正直「何それ?」と思いました。でも調べてみると、これは見事なブランド戦略です。

2014年に全国初の条例を制定して、「牛乳で乾杯」を地域文化として定着させる。A2ミルクという新商品を開発して、付加価値を高める。ふるさと納税の返礼品としても活用する。

システム設計でいう「統合的アプローチ」ですね。一つの施策で複数の効果を狙う。効率的です。

中標津町の乳牛飼育頭数は約3万9千頭。これだけの規模があるからこそ、ブランド戦略が成り立つ。小さな町では真似できない手法かもしれません。

でも考え方は参考になります。「地域の特色を活かす」「新しい価値を創造する」「継続的に発信する」──これは地方創生の基本です。

ただ、気になるのは持続性です。条例を作ったのは2014年。もう10年経っています。最初の盛り上がりを維持し続けるのは、実は一番難しいんです。

データが示す冷徹な現実

システムエンジニアを長くやっていると、数字に対してはシビアになります。希望的観測は禁物。データが示す現実を受け入れることから始めないといけません。

士幌町のIoT推進ラボみたいな取り組みは素晴らしいですが、実際の効果測定はどうなっているのか。投資対効果は出ているのか。継続的な改善サイクルは回っているのか。

KPIの設定と測定──これはシステム運用の基本です。生乳生産量、新規就農者数、ブランド売上、IoT活用度。数値目標を設定して、定期的に測定して、改善策を検討する。

でも現実は厳しい数字ばかりです。生乳生産量は減少傾向、後継者数は目標未達、全体的な縮小トレンドは止まらない。

これは「レガシーシステム」の問題と似ています。古いシステムを使い続けているうちに、だんだん時代に合わなくなって、最終的には全面的な刷新が必要になる。

酪農業界も、そういう転換点に来ているのかもしれません。

地方の命綱としての酪農

60年生きてきて、webライターを始めて5年。いろんな業界を見てきましたが、酪農ほど「地域密着型」の産業はありません。

工場は移転できます。オフィスも移転できます。でも牧場は移転できない。土地と気候と、そこに住む人々と一体になって成り立っている。

私たちIT業界は「クラウド化」「グローバル化」を進めてきました。どこにいても同じ仕事ができるように。でも酪農は違う。その土地でしかできない仕事です。

だからこそ、一度失われると取り戻すのが困難なんです。システムはバックアップから復旧できますが、地域文化は簡単には復活しません。

士幌町のIoT推進、中標津町の条例制定、標津町のヘルパー制度──これらはバラバラの取り組みに見えますが、実は全部つながっている。地域を支える「システム」の一部なんです。

これからの地方は、こういう複合的なアプローチが必要になると思います。一つの施策だけでは効果が限定的。複数の施策を組み合わせて、相乗効果を狙う。

私たちにできること

コンビニで牛乳を買うとき、産地を確認していますか?私は最近、意識的に北海道産を選ぶようにしています。微々たる貢献かもしれませんが、消費者として意思表示はできる。

ふるさと納税も活用しています。中標津町の「なかしべつ牛乳」を返礼品でもらって、家族で「牛乳で乾杯」をやってみました。家内には「何やってるの?」と笑われましたが、これも地域支援の一つです。

でも一番大切なのは、この問題を知ることだと思います。酪農の現状、地方の課題、私たちにできる支援方法──知らなければ、行動のしようがありません。

システムエンジニアとして40年、地方出身者として60年。データと向き合い、故郷を想う一人の人間として、この問題は他人事ではありません。

酪農が消えれば、確実に地方は死にます。でも逆に言えば、酪農を支えることができれば、地方には希望があるということです。

技術の力、制度の力、そして何より私たち一人ひとりの力で、この流れを変えていけると信じています。還暦を過ぎてから、こんなことを考えるようになるなんて、自分でも意外ですが──

今回、参考にしたサイト
地方版IoT推進ラボの窓口一覧
士幌町IoT推進ラボ(PDF)
北海道のIoTを知っていますか?
地域のIoTビジネス創出支援(IPA)
「地方版IoT推進ラボ」を活用しよう
全国の地域ラボ一覧
北海道士幌町基本計画(PDF)
士幌町 地方創生「推進交付金」事業の検証(PDF)
中標津町牛乳消費拡大応援条例(Wikipedia)
中標津町公式「牛乳で乾杯条例」ページ
全国初の『牛乳で乾杯条例』制定10周年と地域ブランド化
牛乳で乾杯の町!中標津町
北海道中標津町 牛乳で乾杯条例10周年記念事業
標津で農業始めませんか?(標津町農業協同組合)
搾乳や給餌以外の業務に取り組んでいる酪農ヘルパー利用事例(PDF)
酪農ヘルパーの朝(農林水産省)
有限会社ファム・エイ(酪農ヘルパー)


桜田泰憲(さくらだ・やすのり)
1964年6月生まれ、北海道目梨郡羅臼町出身。石油関係会社で現場業務を務める傍ら、webライターとして5年間活動。同僚レポーター・mikuの取材協力を得て、地方問題を中心に執筆活動を展開中。

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